ヤンマーアグリ株式会社のAI導入事例|導入した背景や効果について解説

ヤンマーアグリ株式会社は、オートトラクターやスマートアシストなど、複数のAI技術を導入しています。AI導入により、深刻化している人手不足の解消や、コスト削減などの実現に成功しました。

そこで本記事では、ヤンマーアグリ株式会社がAIを導入した背景やAI導入事例、AI導入による効果・成果について紹介します。AIを導入するプロセスや、導入する上での課題、ヤンマーアグリ株式会社の将来展望についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

ヤンマーアグリ株式会社がAIを導入した背景

ヤンマーアグリ株式会社がAIを導入した背景は、以下の3点です。

  • 物流コストの上昇
  • 人手不足の深刻化
  • 食料自給率の低下

それぞれ、詳しく解説します。

物流コストの上昇

農業分野において、物流コストの上昇は課題のひとつです。物流コストの上昇は、石油価格の上昇による運送会社の燃料費高騰と、労働基準法改正による割増賃金率の引き上げに伴う人件費増加が主な要因と考えられています。

人手不足の深刻化

日本では、農業に携わる人手不足が深刻化しています。1999年には約300万人でしたが、2023年には約181万人まで減少しています。そのため、AIやロボット技術、ドローンなどを導入し、自動化・省力化で効率化を図ることが重要です。

参照:農業分野の労働環境改善をめぐる現状と課題|農林水産省

食料自給率の低下

日本では、食料自給率が低下しています。食料自給率とは、毎日口にしている食品のうち、日本国内で作られている食品の割合がどのくらい占めているかを表したものです。世界各国の食料自給率(2022年)は、以下の表の通りです。

食料自給率(カロリーベース)食料自給率(生産額ベース)
日本38%64%
アメリカ101%69%
カナダ177%107%
オーストラリア247%114%
フランス118%72%

参照:世界の食料自給率|農林水産省

上記の表の通り、日本の食料自給率は極めて低いことが分かります。

ヤンマーアグリ株式会社のAI導入事例

ヤンマーアグリ株式会社のAI導入事例は、以下の通りです。

  • オートトラクター・ロボットクラクター
  • スマートアシスト
  • スマートパイロット

それぞれ、詳しく解説します。

オートトラクター・ロボットトラクター

ヤンマーアグリ株式会社の「オートトラクター」は、自動運転技術を搭載しています。ハンドルに触れることなく、正確な直進や旋回を自動で行うことが可能です。また、人がトラクターに乗らずにほ場の約9割を自走できる「ロボットトラクター」も開発しています。

有人機である「オートトラクター」と、無人機である「ロボットトラクター」を同時に動かすことで、作業効率を2倍に高められます。誰でも正確かつ簡単に運転できるため、長時間作業の疲労も軽減できるでしょう。

スマートアシスト

スマートアシストは、GPSアンテナおよび通信端末を搭載した農業機械から発信される稼働状況や、コンディションの情報をもとに、農家の作業改善や経営改善を実現するサービスです。具体的には、機械をモニタリングしてエラーを通知したり、機械の稼働を24時間見守ったりできます。

スマートパイロット

スマートパイロットは、位置情報やロボット技術などのICTを活用して、農作業の省力化・効率化、高精度化を実現する自動運転技術を搭載した、農業機械シリーズの総称です。前述したオートトラクター・ロボットトラクターだけではなく、直進アシスト田植機やオートコンバインなどにも搭載されています。

AI導入による効果・成果

ヤンマーアグリ株式会社がAIを導入したことによる効果・成果は、以下の3点です。

  • 営農コスト削減と人手不足の解消
  • 新規就農者への栽培技術の継承
  • 「農業技術開発功労者 名誉賞状」受賞

それぞれ、詳しく解説します。

営農コスト削減と人手不足の解消

ヤンマーアグリ株式会社は、AIを導入したことにより、営農コスト削減と人手不足の解消を実現しました。トラクターをはじめとした農機の自動走行や遠隔操作、自動収穫ロボット、草刈りロボットなどにより、少人数での農業経営が可能となります。夜間を含む24時間稼働ができるようになったら、さらに多くの作物を栽培できるでしょう。

新規就農者への栽培技術の継承

AIの導入により、新規就農者への栽培技術の継承の実現も可能です。IoTによって熟練者の膨大なデータを集めAIが分析することで、経験のある農家のノウハウを見える化・データ化できれば、新規就農者に栽培技術を分かりやすく継承できます。また、ロボット技術やドローンも活用することにより、重労働から解放され、より安全で快適な農作業ができるでしょう。

「農業技術開発功労者 名誉賞状」受賞

ヤンマーアグリ株式会社とオサダ農機株式会社が共同で取り組むキャベツ収穫機の開発グループが、「農業技術開発功労者 名誉賞状」を受賞しました。刈取りや選別調製、大型コンテナへの収納を一貫してできる高能率収穫機によって、キャベツ収穫に要する労働時間の削減や軽労化などが可能になり、農家経営の向上に大きく貢献した功績が高く評価されました。

AIを導入するプロセス

ヤンマーアグリ株式会社を含めた農業分野の企業がAIを導入するプロセスは、主に以下の4ステップで進められます。

  1. 現状の課題と目的の明確化

まずは、労働力不足や後継者不足、作業効率の悪さ、収益性の低さなど、現場が抱える具体的な課題を特定し、解決したい課題に対する具体的な目標を設定します。

  1. 技術・システムの選定と試験導入(PoC)

次に、目的を達成するために適しているAI技術を選定します。信頼できるパートナーや、ベンダーを慎重に選ぶことも重要です。また、導入前にどのようなデータを、どのように収集・管理するかという体制を整えます。

  1. 本格導入と運用・教育

続いて、PoCの結果をもとにシステムの開発や改良を行い、本格的に現場へ導入します。実際の農作業の中でシステムを運用するだけではなく、現場担当者への教育やトレーニングを通じて、定着を図ることも重要です。

  1. 評価と改善

測定結果や現場からのフィードバックをもとに、システムや運用方法の改善を継続的に行い、より高い効果を目指します。

AIを導入する上での課題

AIを導入する上での課題は、初期・維持コストが高額である点です。AI搭載機器やシステム導入には多額の初期費用が発生し、小規模農家には大きな障壁となります。コストを削減するには、補助金制度を活用したり、機器のシェアリングを実施したりすることがポイントです。

また、専門知識を持つ人材の不足も課題のひとつです。AIを使いこなし、データを分析・管理できる人材が不足しています。そのため、農業従事者向けの研修や、専門家による伴走支援などを行わなければいけません。

ヤンマーアグリ株式会社の将来展望

ヤンマーアグリ株式会社が考える将来展望は、以下の通りです。情報を蓄積・分析することで農業を見える化できる「SA-R(スマートアシストリモート)」を中心に、複合農業をトータルサポートします。

将来展望具体的な例
水田・稲作・端末を用いた自動操作・デバイスで収穫の遠隔操作
畑作・野菜・ロボットトラクターとロボット移植機による複合運転で、作業の自動化・ロボット収穫期とロボット運搬車による収穫自動化
畜産・酪農・ロボットトラクターと無人ロールベーラが連携し、全自動で牧草を収穫・給餌ロボットにより、餌やりを自動化
施設園芸・IoTで湿度や温度、日照などを随時モニタリング・画像診断で成熟度を計測し、ロボットアームで自動収穫
果樹栽培・草刈りロボットが自動で草刈り・ドローンによる生育診断

まとめ

ヤンマーアグリ株式会社は、オートトラクター・ロボットトラクターやスマートアシスト、スマートパイロットなど、AIを導入・活用しています。これにより、営農コスト削減と人手不足の解消や、新規就農者への栽培技術の継承などの実現に成功しました。今後は、情報を蓄積・分析することで農業を見える化できる「SA-R(スマートアシストリモート)」を中心に、複合農業をトータルサポートしていく考えです。

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