2025年3月、ShopifyはAI検索スタートアップ企業のVantage Discoveryを買収し、公式アプリ「Search&Discovery」にAI検索を取り入れました。AIを取り入れたことにより、絞り込み機能だけではなく商品の検索やレコメンド機能なども搭載され、さまざまな機能の実現に成功しました。しかし、「AI検索を導入するプロセスは?」「AIを取り入れたことで生まれるメリットは?」など、疑問を持つ人も少なくありません。
そこで本記事では、Shopifyが「Search&Discovery」にAIを取り入れた理由や導入プロセス、導入によるメリットについて解説します。また、AI検索を導入するときの課題と対策やShopifyの将来展望についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
「Search&Discovery」にAIを取り入れた理由

Shopifyが、オンラインストアの検索機能と関連商品の表示を強化するための公式アプリ「Search&Discovery」にAIを取り入れた理由は、以下の2点です。
- ユーザーの利便性を向上させるため
- 顧客ニーズを把握するため
それぞれ、詳しく解説します。
ユーザーの利便性を向上させるため</h3>
Search&DiscoveryにAIを取り入れたことで、ユーザーの利便性を向上させることに成功しています。ユーザーの利便性が向上した要因は、以下の3点だと考えられています。
- 商品の絞り込み
Search&Discoveryは、従来のShopifyでは難しかった複雑な商品の絞り込みが可能です。商品や価格、在庫の有無、カテゴリなどさまざまな条件で絞り込みができ、複数軸を組み合わせた絞り込みにも対応しています。また、カラーチップを使用したカラーバリエーションの表示や、スライドバーを用いた価格の絞り込みなど、直感的なUIも実現できます。
- 検索表示の最適化
Search&Discoveryでは、テキスト入力での商品検索結果を、任意の状態にカスタマイズすることが可能です。たとえば、「ニット」と検索すると、事前に登録していた商品が1番目に表示されます。セール中の商品などを登録しておけば、任意の商品の販促活動に役立てられます。
- おすすめ商品のカスタマイズ
Shopifyでは、検索した商品と関連性が高い商品をおすすめする「レコメンド機能」が搭載されています。しかし、従来のものは表示されるおすすめ商品は、Shopify側のアルゴリズムで自動生成されるため、任意の商品を表示できませんでした。
一方、Search&Discoveryでは、事前に商品を登録しておくとおすすめ商品のカスタマイズが可能になりました。任意の商品を、自動生成される商品と一緒に表示できます。
顧客ニーズを把握するため
ShopifyがAIを導入した理由のひとつが、「顧客ニーズの把握」です。サイト内検索で入力されたキーワードは、非常に価値のあるデータと言えます。どのような言葉で商品が検索されているか、どのような商品が求められているかを分析することで、顧客の潜在的なニーズやトレンドを把握できます。
分析した結果は、品揃えの改善や商品ページのキーワード最適化、新たな商品開発など、ストア運営のさまざまな側面に活かすことが可能です。顧客が検索しても見つからない商品があれば、新しいビジネスチャンスにつながるかもしれません。
Search&Discoveryとは

Search&Discoveryとは、従来のShopify標準検索機能を大幅に進化させた「AI検索ソリューション」です。ここからは、Search&Discoveryの主な機能や、従来の検索機能との違いについて紹介します。
Search&Discoveryの主な機能
Search&Discoveryの主な機能は、以下の4点です。
| 主な機能 | 内容 |
| セマンティック検索 | キーワードの完全一致だけではなく、意味や文脈を理解した検索が可能。例:「冬のアウター」で検索すると、「コート」「ジャケット」がヒット |
| 検索補正 | スペルミスの自動修正や、同義語・類義語の自動認識が可能。 |
| パーソナライズされた検索結果 | ユーザーの行動履歴を考慮した商品表示や、リアルタイムでの検索結果調整が可能。 |
| 多言語対応 | 英語を中心とした、多言語での検索が可能。 |
従来の検索機能との違い
AI検索を導入する前の機能と比較すると、以下の表の通りになります。
| 機能 | 従来の検索 | Search&Discovery |
| 検索方式 | 完全一致のみ | 意味理解検索 |
| 関連語対応 | 不可 | 可能 |
| Typo補正 | 不可 | 可能 |
| パーソナライズ | 不可 | 可能 |
| 多言語対応 | 限定的 | 可能 |
| 分析機能 | 基本的 | 詳細な分析 |
上記を見て分かるとおり、AI検索の導入によって、さまざまな機能を使用できるようになったことが分かります。
AI検索を導入するためのプロセス

AI検索を導入するためのプロセスは、以下の通りです。
- 目的・課題の明確化
まず、社内の情報検索における課題を特定し、AI検索を導入して何を達成したいのかを明確な目標として設定します。その後、コスト削減や生産性向上など、導入によって得られる数値的なビジネスインパクトを試算します。
- データ準備
続いて、AIが処理しやすいように、テキストの抽出やフォーマットの統一、アノテーションといったデータクレンジング作業を行います。データクレンジング作業は、検索精度に大きく影響するため重要です。
- PoC、プロトタイプ作成
小規模なデータセットや特定の部署を対象に、AI検索のプロトタイプを構築します。実際に利用してもらい、検索精度や使い勝手、導入によって解決できる課題などを評価します。
- システム開発、実装
PoCでの結果を踏まえ、本格的なシステム環境を構築します。たとえば、クラウド環境の整備や、必要なAPI連携などです。また、AIモデルのチューニングや既存の社内システムとの連携など、本格運用に向けた開発も行います。
- 運用、改善
最後に、実際の業務で利用を開始します。利用者のフィードバックを収集し、検索アルゴリズムのチューニングや文書の更新プロセス見直しなど、検索精度と利便性の継続的な改善を行うことが必要です。
Search&Discovery導入によるメリット

Search&Discovery導入によるメリットは、以下の2点です。
- 平均35%の検索コンバージョン率向上を実現
- 検索離脱率の削減に成功
それぞれ、詳しく解説します。
平均35%の検索コンバージョン率向上を実現
Search&Discoveryの導入により、平均35%の検索コンバージョン率向上を実現しました。検索コンバージョン率とは、検索エンジン率や広告からサイトを訪れたユーザーのうち、商品購入や問い合わせなどの「コンバージョン」に至ったユーザーの割合を示す指標です。これにより、検索から購入への転換率が大幅に改善しました。
検索離脱率の削減に成功
Search&Discoveryでは、「検索結果0件」のケースが大幅に減少しました。関連商品の表示によって、離脱を防止できるためです。これにより、ユーザーがサイト内を回遊しやすくなり、ユーザーの利便性向上にもつながっています。
AI検索導入時の課題と対策

AI検索を導入するときの主な課題と対策は、以下の表の通りです。
| 課題 | 内容 | 対策 |
| データの品質と不足 | 高品質で十分なデータがない場合、AIモデルのカスタマイズや精度の向上は困難 | データの正確性を確保し、バイアスを減らすための品質管理と適切なデータ管理体制を構築する |
| 情報漏洩とセキュリティリスク | 社内情報を利用する際、機密情報や個人情報の漏洩リスクが伴う | 情報漏洩のリスクを最小限にするために、従業員向けの明確な利用ガイドラインやマニュアルを策定する |
| 専門知識・人材の不足 | AIを効果的に導入・運用するためには、専門的な知識が必要 | 社内研修などを通じて従業員のAIリテラシーを向上させたり、外部の専門家を活用したりする |
AI検索を導入するときは、上記の表を参考にする必要があります。
Shopifyの将来展望

Shopifyでは今後2年間、年間24%の収益成長が見込まれています。また、営業利益率は2027年までに約18%まで上昇する可能性があります。AIの活用だけではなく、マルチチャネル化やオフラインとの連携強化によって、EC事業が進化していくと考えられているためです。さらなる伸びを実現するためには、国際的な成長や決済の導入、AIのマネタイゼーションを克服する必要があります。
まとめ
Shopifyは「Search&Discovery」にAIを取り入れたことで、ユーザーの利便性向上や顧客ニーズ把握を実現できました。また、平均35%の検索コンバージョン率向上の実現や、検索離脱率の削減にも成功しています。今後は、国際的な成長や決済の導入、AIのマネタイゼーションを克服すると、さらなる成長が見込まれています。


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