「生成AIをマーケティングにどう活かせば成果が出るのか?」「他社はどう使っているのか?」
そんな悩みを抱えていませんか?特に従来のプロモーションはコストやリーチ、パーソナライズの課題を抱えています。
その課題の突破口として、生成AIが注目されています。
アサヒビール株式会社(以下、アサヒビール)は、新商品の発売にあたり、画像生成AI「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」を日本で初めて体験型プロモーションに活用しました。
そして発売からわずか1週間で100万ケースを突破し、年間販売目標150万ケースの約67%を達成しています。
本記事では、アサヒビールの事例をもとに、生成AIマーケティングのポイントを解説していきます。
従来の体験型プロモーションが抱える3つの課題

従来の体験型プロモーションには、以下の3つの課題がありました。
- コスト
- リーチ
- パーソナライズ
上記の課題に、アサヒビールはどのように挑んだのか見ていきましょう。
生成AIが可能にするプロモーション

引用:アサヒビール公式X
アサヒビールは2023年9月26日、新商品「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」の発売に先駆けて、Create Your DRY CRYSTAL ARTサービス(注1)を開始しました。
引用:アサヒビール公式X
本サービスは画像生成サービスです。
スマートフォンとLINEアカウント(満20歳以上限定)があれば、画像とテキストを入力し、スタイルを指定するだけで、上記のような画像を作成できます。
上記により、従来のプロモーションでは難しかった、リーチの拡大をコストを抑えて実現しました。
注1:Create Your DRY CRYSTAL ARTキャンペーンは、現在は終了しています。
パーソナライズ体験
アサヒビールのプロモーションでは、ユーザーがオリジナルアートを生成できます。
本サービスは、新商品が掲げる未来志向のビールです。新たなライフスタイルの提案というコンセプトを体現しており、日本初の取り組みです。
自身の画像と指示が反映されたオリジナルアートは、SNSでの発信につながりました。
さらに、オリジナルアートに新商品が自然に映り込むことによって、商品の認知と購入喚起を図る設計となっています。
アサヒビールが選んだ画像生成AI「Stable Diffusion」とは?

本記事では、Stable Diffusionについて以下の内容を紹介します。
- Stable Diffusionとは?
- オープンソースによるカスタマイズ性
- 他の画像生成AIとの違い
最後まで読めば、Stable Diffusionの仕組みがしっかり理解できるようになります。
Stable Diffusionとは?
Stable Diffusionは、英Stability AI社を中心に開発され、2022年に公開された画像生成AIです。
潜在拡散モデル(Latent Diffusion Model)という技術で、画像を圧縮された潜在空間で処理します。計算負荷を抑えながら、テキスト入力だけで画像やアート作品を生成できます。
また、テキストから画像を生成するだけではなく、画像を編集する機能も備えたツールです。
オープンソースによるカスタマイズ性
Stable Diffusionは、カスタマイズ性の高いオープンソースとなっています。
オープンソースとは、画像生成の仕組みとAIの学習データが一般公開されていることを指します。
具体的には、世界中のユーザーが、追加機能を自由に開発し組み込むことが可能です。他にも、ウェブインターフェースの開発や、公式には提供されていない画像の一部を修正する機能を追加できます。
また、自社サーバーで運用できるため機密情報や個人情報の漏洩を最小限に抑えられます。さらに、GPUによる並列計算やメモリ使用量の効率化により、大規模なアクセスに対しても画像生成が可能です。
他の画像生成AIとの違い
他の画像生成AI(Midjourney、 DALL-E 3)は、主にSaaS(クラウドサービス)です。
Stable Diffusionのオープンソースとの違いを以下の表にまとめました。
| 項目 | Stable Diffusion (オープンソース) | Mid Journey、 DALL-E 3 (SaaS) |
| 提供形態 | モデル自体が公開 自社サーバーで運用 | クラウドサービスとして提供 |
| カスタマイズ性 | 高い (自社専用モデルを構築可能) | 低い (提供機能の範囲内での利用) |
| セキュリティ | 高い (データを外部に出さずに処理可能) | サービス依存 (データが外部サーバーに送信される) |
| コスト構造 | 運用次第でコストがかかる | 利用量に応じた課金が一般的 |
| 導入ハードル | 技術的な準備が必要 | 簡単に始められる |
Stable Diffusionは、自社サーバーで運用できるため、セキュリティやカスタマイズ性が高いです。しかし、導入には専門の知識によるモデルの構築や高性能GPUサーバーが必要です。
【アサヒビール】生成AIマーケティングの3つのポイント

アサヒビールのプロモーションには、3つのポイントがあります。
以下の表にポイントや目的、内容をまとめました。
| ポイント | 目的 | 内容 |
| 体験の提供 | 目的の転換 | AI技術のデモではなく、オリジナルアートを作る顧客体験 |
| コンセプトとの連動 | 未来志向というコンセプトに生成AIを融合させて、日本初の体験の実現 | |
| 直感的なUI/UX | 簡単なテキストと画像アップロードで体験が可能 | |
| 参加と拡散の参仕組み | 参加ハードルの低減 | LINE連携で完結 |
| 拡散の動機付け | オリジナルアートがシェアの動機となり、商品の認知や購入喚起に貢献 | |
| 法的・倫理的リスク対策 | 法令・倫理的配慮 | 利用規約を整備し、生成された画像の著作権や利用範囲を明確化 満20歳以上限定とし、酒類メーカーとしての法令・倫理的配慮を徹底 |
アサヒグループのAI戦略

ここまではアサヒビールの事例に焦点を当ててきました。
本記事では、さらに視点を広げ、アサヒグループ全体のAI戦略を紹介します。
- マーケティングの深化
- 「やってTRY」によるAI活用推進
- R&Dから全社業務へ
グループ全体で取り組む上記の3つのAI戦略を見ていきましょう。
マーケティングの深化
アサヒグループは、生成AIを活用した顧客理解の深化に取り組んでいます。
AIから得られたインサイトをもとに、顧客の期待を超える商品開発やサービスの提供を実現していきます。
こうした一連のプロセスが、アサヒグループが目指すマーケティングの深化であり、顧客との深い関係の構築と、持続的な成長を目指す戦略です。
「やってTRY」によるAI活用推進
アサヒグループは2023年5月、ジェネレーティブAI「やってTRY」プロジェクトを発足させました。Data & Innovation室の主導のもと、グループ各社から自薦で集まった約100名の社員が、生成AIの活用に取り組んでいます。
本プロジェクトは、全社規模での試行を重ねながら知見を蓄積し、AIをどのような業務に活用できるかを見極めています。
R&Dから全社へ
アサヒグループは、R&D(研究開発)部門において社内情報検索システムの試験導入を開始しました。このシステムにはAzure OpenAI Serviceが活用されています。
主な機能として、社内に点在しているファイル内の文章や画像を検索可能です。さらに、検索結果をAIが100文字程度に要約するという独自の機能も搭載しています。
マーケティング分野と社内システムの両面でAI活用を進め、将来的にアサヒグループ全社員の業務効率化を目指す構想です。
【アサヒビール】生成AIマーケティングの実践

生成AIマーケティングを実践するプロセスを、アサヒビールの事例を参考に、やるべきことを以下の表にまとめました。
| プロセス | アサヒビールの事例 | やるべきこと |
| 目的の明確化 | 驚きとワクワクという体験 新商品の認知拡大と購入喚起 | KGI/KPIの具体的な設定 |
| インセンティブの設計 | ターゲットが楽しいと感じ拡散したくなる設計 パーソナライズ体験 | ターゲットに行わせたい行動設計 |
| AI技術の選定 | ブランドの世界観をアートで表現するためStable Diffusionを採用 オープンソースのカスタマイズ性とセキュリティが、ブランド体験の質と安全性を両立 | 目的に合わせたAI技術の選定 |
| ガイドライン策定 | 満20歳以上限定としてコンプライアンス遵守 | 法的・倫理的リスクの洗い出し |
| スモールスタートによる効果測定 | 「やってTRY」プロジェクトでの試行 R&D部門から試験導入 | 小規模での試験導入 |
上記のプロセスは、AI導入を成功させる共通のプロセスと言えます。
まずは自社のどの課題を解決するかという目的の明確化から、AI活用の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。


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