AI生成楽曲がチャートのトップに!:AIアーティストはなぜチャートに入るのか?音楽業界に起こる変化について

2025年11月、音楽業界に衝撃が走りました。AIによって制作された楽曲が、あのビルボードチャートで1位を獲得したのです。AIアーティストにより制作された楽曲についてはかねてよりSpotifyなどにアップロードされるなど話題になっていましたが、ビルボードチャートでの1位獲得は業界の人々を大変驚かせました。

この記事では、今広がりを見せているAIアーティスにより制作された楽曲やそれらが音楽業界に与える変化についてご紹介していきます。

AIアーティス・AI楽曲とは?

あまり聞きなれないかもしれませんが、現在密かに広がりを見せているのが、AIアーティスの存在です。その種類を主に2つに分かれます。完全自律型のAIアーティストとそうではないAIアーティストです。それぞれ、どのような違いがあるのでしょうか。

完全自律型のAIアーティスト
人間の介入をほとんど必要とせず、AIが自律的に音楽制作を行うというものです。AIプラットフォームを利用し、人間が簡単なプロンプト(指示)を入力するだけで、AIが作詞・作曲・編曲・ボーカルまで全て生成します。指示を出した人間はあくまで指示役に徹し、「アーティスト」として架空のキャラクター(顔写真、バイオグラフィーなど)を作成して、作品を世に出します。実在の人物が表に出ないため、「自律型」に見えます。人はあくまでもディレクター的な役割で関わるという形をとっています。「完全」とは言っているものの、実際は人が指示を出しているため、表現には賛否両論あります。

人×AIアーティスト
完全自律型のAIアーティストでは人が指示役にのみ徹しdおていましたが、この場合は人間とAIのハイブリッド型という形で楽曲を制作します。人間が歌詞を書きAIが曲をつける、人間が作曲し、AIがアレンジや編曲、人間がボーカルを録音し、AIがミキシング・マスタリングなど人とAIが協働で楽曲を制作しているというイメージです。楽曲の発表に関しても人がメインの場合もあれば、AIでキャラクターを作成してAIがメインになることもあります。

AIアーティストの活躍

“世界初の完全AI生成曲のチャート入り”
2024年8月にドイツでButterbro(Josua Waghubinger)によるAI生成曲「Verknallt in einen Talahon」 がドイツの公式シングルチャート Top 100 で48位に初登場したのが、完全AI生成曲の世界初のチャート入りとされています。これはギネスワールドレコードによって認定されています。この楽曲はオーストリアのプロデューサーによって制作されたものです。

Breaking Rust「Walk My Walk」ビルボードチャート1位獲得
2025年11月、世界的に有名なビルボードのBillboard Country Digital Song Sales チャートでAIが制作した楽曲が1位を獲得したというニュースが音楽業界を驚かせました。AIだけで作られた“カントリー音楽アーティスト”プロジェクトのBreaking Rustが製作したWalk My Walkという曲が1位を獲得しました。これは史上初の快挙で、本物志向の強いカントリーのジャンルでこのようなことが起きたことに困惑や議論も起きているとのことです。プロジェクトの開発者はAubierre Rivaldo Taylorという人物とされていますが、詳細はほとんど不明のようです。

また、ビルボードだけにとどまらずSpotifyでも1ヶ月足らずで300万回以上ストリーミングされたとの情報もあります。Viral 50チャート(米国)でトップにもなり、別の曲である「Livin’ on Borrowed Time」も世界トップ5入りするという驚きの結果を残しています。そして、その快挙は続いており、現在Spotifyで月間200万人以上のリスナーを獲得しています。

Xania MonetがBillboard のラジオチャートにデビュー
2025年11月にはBillboard のラジオチャート部門であるAdult R&B Airplay チャートで、Xania Monetの「How Was I Supposed to Know?」がNo.30 入りして、チャートデビューしたとのニュースもありました。Xania Monetは数百万ドルのレコード契約を結んでおり、オランダ反難民歌がSpotifyのViral 50 Globalチャートでトップ5入りするなど、反響は広がっています。Xania Monetは、ミシシッピ州出身の詩人Telisha “Nikki” JonesがAIプラットフォームSunoを活用して生み出したAIアーティストで、現在もっとも成功している事例のひとつといえるでしょう。

まとめ

ここまで、海外でのチャート入りなどの快挙について紹介をしてきましたが、日本でもAIを使用した楽曲制作は行われています。AIアーティスト時代の原型としても知られる初音ミクは広義のAIアーティストとして語られる存在です。近年では AI歌唱(初音ミク NT、AI音声合成) も導入されるようになってきました。
また、SONY CSL(ソニー・コンピュータサイエンス研究所)などが音楽作曲におけるAI活用に関する研究の一環として、Flow Machinesプロジェクトというものを立ち上げるなど、日本でもAIによる楽曲制作の動きは加速しています。海外と日本で異なる点をあげるとすれば、にほんは「人間+AIの共創が中心」で海外は「AI単体アーティストを前面に出す」という点です。日本ではキャラクター性を持たせて楽曲を歌わせたりしますが、海外を実在の人物のように歌わせているという特徴がみられます。

AIアーティストの普及に伴い、データの取り扱い、収益配分、ボイスクローンなどの声の権利に関する課題が生じることが予想されます。これらの問題については、法整備を段階的に進めることで対応していくことが可能です。問題点以上に、人間のアーティストの役割が変わり、AIを使いこなす“ディレクター型アーティスト”が増えてきたり、チャートの価値が変わったり、AI特有の音響処理や構造を使った“AIネイティブ音楽”が増えて新たなジャンルが生まれるなど、音楽業界の新たなステージが開かれていくことが予想されます。

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