AI 「リハビリがゲームになった理由」 — ‘やる気’ と ‘科学’ を同時に捉える

病気やケガなどでのリハビリは長期に渡り、とても苦痛なことが多いことで知られています。そのモチベーションを保つことはとても困難で、モチベーション次第では治りの度合いにも影響してきます。医療現場の中でも、そんなリハビリテーションの分野においてAIが患者をサポートするというサービスや研究が広がりつつあり、AIを使った“リハビリのゲーム化”は世界各国で研究・実装が進んでおり、医療現場の体験設計を変えつつあります。

この記事では、技術の仕組みだけでなく、どの国でどんな実装が進んでいるかをわかりやすくご紹介します。

目次

リハビリテーションとは

リハビリテーションとは、病気やけがなどで低下した身体・精神・社会的な機能を回復し、その人が再び自分らしい生活や社会参加ができるように支援するプロセスのことを言います。このように文章にすると簡単なように見えますが、実際に病気やけがのあとにリハビリを長期的に行うとなると、精神的にも肉体的にもとてもつらいものになります。では、リハビリとは具体的にどのような過程で何を回復するために行われるのでしょうか。

【リハビリテーションの主な目的】

◎身体機能の回復(筋力・関節可動域・歩行など)

◎日常生活動作(ADL)の改善(食事・着替え・移動など)

◎社会復帰の支援(仕事・学校・地域活動への参加)

◎精神的サポート(不安軽減・意欲向上)

◎介護予防(高齢者の体力維持など)

【リハビリテーションの主な種類】

◎理学療法(PT):歩行訓練、筋力トレーニングなど

◎作業療法(OT):生活動作訓練、手作業、認知訓練など

◎言語聴覚療法(ST):言語・嚥下(飲み込み)訓練

◎社会・職業リハビリ:就労支援、社会参加支援

【リハビリが行われる場所】

◎病院(急性期〜回復期)

◎介護施設(デイサービス・通所リハビリ)・自費リハビリ施設

◎自宅(訪問リハビリ)

これらは主に医師・理学療法士(PT)を中心に情報共有しながら進められ、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、看護師、介護職、ソーシャルワーカーなどの”人”が中心となり、”人によって”行われます。

リハビリを“ゲーム化”するAIとは

近年、国内外の病院で研究や実装が進んでいるAIを活用した事例の中にはリハビリにAIを取り入れるといったものがあります。AI とセンサーで患者の体の動きをトラッキングし、ゲーム感覚でリハビリを行う仕組みを導入しているというのです。これらは、患者のリハビリ継続のための意欲や向上心にも影響を及ぼしており、リハビリを行う上で大変有効的であるとの結果も出ています。

では、AIでリハビリをサポートするとはいったいどのように行うのでしょうか。その仕組みを見ていきましょう。

従来のリハビリは、同じ動作を何十回も繰り返す/成果が分かりにくい/痛い・つらい・退屈という苦難がありました。しかし、ここにAIの力を借りて「運動」→「体験」→「意味のある行動」に認識が変わることで目に見えるる形で、患者本人が小さな成果でも感じ取ることができるようになるのです。AIの細かな関わり方についてご紹介します。

① センサーで身体を“読む”
カメラ(RGB / 深度カメラ)、ウェアラブルセンサーを利用し、床圧センサーを利用し、AIが関節の角度や関節の角度、動作の滑らかさ、リズムや反応速度の情報をリアルタイムで取得します。これは、人の目では測ることのできない領域であり、患者一人一人の可能性を表す数値でもあります。これらの情報を取得した結果、AIが患者の”今の状態”を把握します。それは、言葉では伝えきれないような今日の調子、疲労度、前回との違い、できる限界ラインをAIが毎回学習するということです。そのため、毎回同じメニューではなく、“今日の身体に合った難易度”を自動調整できます。

②ゲームとして可視化する
モニターなどで可視化する形にして、正確な体の動きをセンサーで常に感知することで、正しい動作や正しい数値の時にだけモニターに変化が現れるなどのゲーム的な表現を利用して、以下の図のように患者の意欲や成果の認識を手に入れます。

正確な動作ほどスコアが伸び、間違った動作は自然に失敗する、また人と人同士だけで行う上で一番動きにつながりにくくなる「怒らる」「否定される」といった過程が存在しないため、精神的な面でもリハビリの継続につながっていきます。

実際に評価されている効果として、患者側はリハビリ継続率が上がる・痛みへの恐怖が軽減・「やらされている」感覚が減るといったものがあげられます。特に高齢者・小児・脳卒中後患者で効果が高いとされています。また、医療側としても、理学療法士の負担軽減・数値データで経過を説明・遠隔リハビリ(在宅)にも展開可能といったAIが「補助療法士」として存在しているという評価もされています。
(参考:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1875952125000916?utm_source=chatgpt.com

③AIは“上達の癖”を覚える
日々患者のデータを蓄積していくAIは、センサーからの情報のみに関わらず患者ごとの上達の癖を覚えていきます。患者ごとに、どの動作が苦手か、どこで集中力が切れるか、成長が止まりやすいポイントを理解し、その日の状況にや患者の癖に応じたリハビリのメニューを組みます。そのため、個別最適化が行われ、効率よくリハビリを実施していくことができます。

実例から見るAIリハビリ

オランダ:センサー + ゲーミフィケーション
アムステルダム大学医学部などが多数のリハビリ病院と共同プロジェクトでAI が動作評価して「ゲーム画面で即フィードバック」 を行うという仕組みで実際にリハビリを行っています。バランス改善ゲームや歩行シミュレーションでライフル射撃スコア化する、バーチャルキャラクターとの追いかけっこなどの形で実施することで、リハビリの辛さを「体験」に変えて患者がリハビリを「やりたい」状態にする取り組みが行われています。
参考:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40066314/
参考:https://rehab.jmir.org/2025/1/e70802?utm_source=chatgpt.com

▣アメリカ:医療機器 と AIゲーム連携
アメリカでは、スタンフォード大学やUCLA Health、大手ベンチャーと病院が連携するなどして医療機器として承認された製品化が進んでいるとの情報もあります。実際に、脳卒中患者の歩行訓練でAI が姿勢矯正を即時提示したり、バランス改善ゲームで転倒リスクの低下みられるなどの成果や自宅リハビリ継続率の改善なども報告されています。
参考:https://www.researchgate.net/publication/377963331_Artificial_intelligence-driven_virtual_rehabilitation_for_people_living_in_the_community_A_scoping_review?utm_source=chatgpt.com
参考:https://www.frontiersin.org/journals/neurology/articles/10.3389/fneur.2025.1603233/full?utm_source=chatgpt.com

イギリス:NHS 研究プロジェクト
NHS(国民保健サービス)が実証研究を支援して、デジタル治療の標準化やAIゲーム化リハビリの効果測定、地域医療 × AI 開発ベンチャーの連携などを促進しています。英国は 保険制度としてのデジタル治療導入が進んでおり、
AI リハビリゲームが “医療サービスの一部” として検討されている国です。
参考:https://transform.england.nhs.uk/information-governance/guidance/artificial-intelligence/
参考:https://digital.nhs.uk/services/ai-knowledge-repository

まとめ

日本でも同様に国立長寿医療研究センターや大学のリハビリテーション学科、医療系スタートアップが主導となり医療現場にリハビリのAI導入が進められています。特に日本初で”デジリハ”と呼ばれる、障害児向けのリハビリをゲーム化したモデルは、国際的な医療福祉モデルとして世界に広がりを見せています。

AIによるリハビリのゲーム化は、治療の効率化だけでなく、患者の体験そのものを変えつつあります。AIは人間の代わりに治療を行うのではなく、継続や意欲を支えるパートナーとして医療現場に入り始めているのです。

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