2025年11月12日、OpenAIがGPT-5.1を発表しました。今回のアップデートでは10秒かかっていた応答が2秒になり、繰り返し使う情報を保存する仕組み(キャッシュ機能)を使えば、最大90%コスト削減が可能になります。さらに冷たくて機械的という不満を解消し、親しみやすい会話ができるようになりました。
この記事では、GPT-5.1で何が変わったのか、GPT-5と比べてどれだけ良くなったのか、そして明日から使える方法を紹介します。
GPT-5.1で変わった5つのこと

2025年11月12日、OpenAIはGPT-5.1をリリースしました。「冷たくて機械的」「簡単な指示も守ってくれない」という不満に応え、実際の仕事で使いやすくするために5つのアップデートをしました。
- 質問の難しさに応じて考える時間を調整する仕組み
- 2つのモデルを自動で使い分ける機能
- 繰り返し使う場面でのコスト削減
- 話し方を自由に変えられる設定
- プログラミングを助ける新しいツール
これらのアップデートで、GPT-5.1は「速く、安く、使いやすい」という声に応えるようになりました。
質問の難しさで自動的に考える時間を調整
GPT-5.1で変わったのが、「適応型推論」という仕組みです。質問の難しさを自動で判断し、考える時間を調整します。簡単な質問には素早く答え、難しい問題にはじっくり時間をかけます。
たとえば、「npmコマンドでインストール済みパッケージを表示するには?」という質問で比べてみましょう。GPT-5では約10秒かかっていたものが、GPT-5.1では約2秒で答えが返ってきます。速度は5倍、使う処理量(トークン)も5分の1に減り、コスト削減にもつながります。
逆に、複雑な数学の問題やプログラミングの課題では、GPT-5.1は長めに時間をかけて考えます。簡単な質問で待たされることがなくなり、難しい問題ではより正確な答えが期待できます。
2つのモデルを自動で使い分け
GPT-5.1では、2つのタイプが用意されました。それをAutoが自動で使い分けるので、ユーザーは選ぶ必要がありません。
| モデル名 | 得意なこと | 使われる場面の例 |
|---|---|---|
| GPT-5.1 Instant | 日常会話、素早い返答 | 「今日の天気は?」「このメールを要約して」 |
| GPT-5.1 Thinking | 複雑な問題、深い分析 | 「この契約書の法的リスクを分析して」「最適な投資戦略を提案して」 |
| GPT-5.1 Auto | 自動で最適なモデルを選択 | すべての質問(ユーザーは意識不要) |
GPT-5の時点でも自動切り替えは導入されていましたが、「どの場面でThinkingを手動で選ぶべきか」で悩むユーザーもいました。GPT-5.1では質問内容を判断し、自動で最適なタイプを選びます。「どれを使えばいいんだろう?」と考えることなく、タスクに応じたモデルとスピード感で答えを受け取れます。
繰り返し使えば90%安くなる仕組み
GPT-5.1では、繰り返し使う情報を一時保存しておくプロンプトキャッシュという仕組みが改良されました。保存できる時間が数分から最大24時間に延び、同じ内容を何度も入力する手間が減り、費用も安くなりました。
保存した情報を使うと、料金が通常の90%オフになります。通常は100万トークンで1.25ドルかかるところが、0.125ドルで済むのです。FAQの自動応答やプログラムのチェックなど、同じ資料を何度も使う仕事では、コストを抑えられます。
8種類の話し方から選べる
GPT-5.1では、話し方を自由に変えられる機能が改良されました。従来は数種類しかありませんでしたが、8種類のスタイルから選べます。
| スタイル | 特徴 |
|---|---|
| デフォルト | バランスの取れた標準的な話し方 |
| プロフェッショナル | 丁寧で正確なビジネス向け |
| フレンドリー | 親しみやすく温かい雰囲気 |
| 率直(Candid) | 励ましながらはっきり伝える |
| 個性的(Quirky) | ユーモアを交えた創造的な表現 |
| 効率的(Efficient) | 簡潔で要点を押さえた説明 |
| オタク風(Nerdy) | 専門的で詳しい解説 |
| シニカル | 皮肉を含んだ辛口の表現 |
設定変更の反映タイミングも変わりました。GPT-5では新しい会話を始めないと変更ができませんでした。GPT-5.1では会話の途中でも、設定を変えれば口調が変わります。ビジネスの場面では丁寧に、社内のやり取りでは親しみやすくと、状況に応じて切り替えられます。
プログラミングが楽になる2つの新ツール
GPT-5.1では、プログラミングを助ける新しいツールが追加されました。コードの修正案を手作業で適用する手間が省けます。
新たに追加されたのがapply_patchとshellです。
| ツール名 | できること | 開発者への効果 |
|---|---|---|
| apply_patch | コードの修正を直接反映 | 提案された変更を手動でコピー&ペーストする作業が不要に |
| shell | コマンド操作をAI自身が実行 | ターミナルを開いて手作業でコマンドを打つ手間が削減 |
効果は数字にも表れています。プログラミングの難しさを測るテスト「SWE-Bench Verified」で、GPT-5.1は76.3%を記録しました。GPT-5の72.8%から約3.5ポイント上がっています。また、ある開発支援企業の評価では、コード編集の精度が7%向上し、複雑な作業での信頼性が業界最高水準に達したと報告があります。
結果として、開発者はコードチェックの時間を減らし、より創造的な設計に集中できるようになりました。
GPT-5と比べて何が良くなった?

数字で見るGPT-5.1の実力は、GPT-5からどれだけ変わったのでしょうか。
応答速度は最大5倍、料金は半額になりました。そして使い心地も良くなっています。これらの改善が実際の仕事にどう役立つのか、具体的な数字とともに見ていきましょう。
応答速度の改善
まず応答速度の向上です。簡単な質問なら、GPT-5 Thinkingの約2倍速く答えが返ってきます。質問の難しさに応じて処理を調整する適応型推論のおかげです。
企業での実測データも出ています。
| 企業名 | 業種 | 改善結果 |
|---|---|---|
| Pace社 | AI保険サービス | AIエージェントの実行速度が50%改善 |
| LegalOn Technologies社 | 法務支援サービス | 処理速度が約30%向上 |
| BAM社 | 金融企業 | GPT-5より2〜3倍高速、GPT-4.1やGPT-5を上回る性能 |
処理効率も良くなっています。多くの簡単な質問で使う処理量が半分以下になり、結果としてAPI利用料金の削減にもつながります。速さと安さ、両方で実務に大きなメリットです。
コスト競争力の優位性
利用料金は、競合モデルと比べても有利です。入力100万トークンあたりの料金は1.25ドルで、これはGPT-4oの入力単価の約半額です。さらに競合のClaude Opus 4.1と比べると、約90%も安い計算になります。
この価格差がどれほど大きいか、具体的に見てみましょう。
| モデル | 入力100万文字分の料金 | GPT-5.1との比較 |
|---|---|---|
| GPT-5.1 | 1.25ドル | 基準 |
| GPT-4o | 2.50ドル | GPT-5.1の2倍 |
| Claude Opus 4.1 | 15.00ドル | GPT-5.1の約12倍 |
実際にIntuitやTargetとの大型提携、AzureやCopilot StudioでのGPT-5.1提供開始など、大手企業がOpenAIの最新モデルを本格的に取り入れ始めています。
公式発表では「新しい体験」や「生産性向上」を理由として挙げていますが、価格性能比の高さも、採用の要因の一つと考えられます。
APIを大量に使う企業ほど、これらのモデルを活用することでトークンあたりの単価差がコスト削減につながるのです。
使い心地の改善
数字では測れない使い心地の部分も良くなりました。GPT-5では、話し方が「機械的で冷たい」という不満がありましたが、GPT-5.1では温かく親しみやすい話し方になっています。
指示への対応も改善されました。「6単語で答えて」「表の形で出して」といった細かい注文に対し、GPT-5.1はより正確に応えます。もともと文字数を守らなかったり、指定した形式から外れることがありましたが、GPT-5.1ではこうした失敗が減ったと報告があります。
会話の安定性も高まっています。長いやり取りの中で口調が急に変わったり、余計な説明が入る傾向が抑えられ、最後まで一貫したスタイルを保ちます。法務支援サービスのLegalOn Technologies社の検証では、契約書の修正案が従来より良い内容を出す確率が2倍以上になったと報告があります。
明日から使える2つの時短術

GPT-5.1の本当の価値は、使ってみて初めて分かります。2つの実践的な使い方を紹介します。
- 企画書の原案作成を短縮する方法
- データ分析を短縮する方法
どちらも難しい知識は不要で、明日から試せますので具体的な手順を見ていきましょう。
活用法1 企画書原案の作成を短縮
企画書作成はビジネスパーソンを悩ませる作業です。アイデア出しから構成、内容の充実まで時間がかかりますが、GPT-5.1のThinkingモデルを使えば削減できます。
ステップ1:ブレインストーミング(50アイデア生成)
まずはアイデアを大量に出します。
「〇〇業界向けの新規事業アイデアを50個出してください。ターゲットは△△、解決すべき課題は□□です」
Thinkingモデルに依頼すると、色々な切り口のアイデアが揃います。
ステップ2:骨子作成
次に、選んだアイデアを企画書の骨子にします。
「先ほどのアイデア3番を企画書にまとめてください。構成は、背景・課題・解決策・市場規模・収益モデル・実施スケジュールで」
と指示すると、たたき台の構成が完成します。
ここでは構成をゼロから考えるのではなく、GPT-5.1にドラフトを作らせて、人が微調整するイメージです。
ステップ3:内容充実
最後に、各章を詳しく書き込みながら、人の手で仕上げていきます。
「市場規模の章を800文字で詳しく書いてください。
既存の統計データと成長予測のロジックを含めてください。」
「収益モデルの章では、3パターンの料金プラン案と、それぞれのメリット・デメリットも整理してください。」
このように依頼すれば、AIに書かせる→人がリライト・調整することで、説得力のある内容に仕上がります。
活用法2 データ分析の効率化
データ分析は時間がかかる上に、専門知識も必要です。ExcelやPythonでの計算、グラフ作成、レポート作成と、一連の作業に時間がかかります。GPT-5.1 Instantモデルで、この作業を効率化できます。
1.CSVファイルから基本統計量を自動算出
CSVファイルをアップロードすると、
- 平均値
- 中央値
- 標準偏差
- 件数、最小値・最大値
などを計算してくれます。
手作業で関数を入力したり、Pivotテーブルを組む必要はありません。
2.外れ値の自動検出と傾向分析
異常なデータを見つけ、「なぜこの値が出たのか」という傾向まで分析してくれます。
3.グラフ自動生成(ビジュアライゼーション)
棒グラフ、折れ線グラフ、散布図など、データに適したグラフを自動で作成します。
実践プロンプト例:
| 「添付のCSVファイル(過去12ヶ月の売上データ)を分析してください。 要件は以下のとおりです:– 平均・中央値・標準偏差などの基本統計量を算出すること– 外れ値を検出し、その特徴と発生時期を整理すること– 売上推移と主要カテゴリ別売上のグラフを作成すること– 重要な示唆を3点に要約して提示すること |
まとめ
GPT-5.1は「冷たい」「指示を守らない」という不満に応えるため、実用性重視のアップデートを行いました。
速さ、安さ、使いやすさの3つが良くなったGPT-5.1は、あなたの仕事の課題とGPT-5.1の強みが合うかもしれません。
まずは今日紹介した2つの方法から試してみてください。実際に使ってみれば、使い心地の良さが分かるはずです。


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