ヤンマーエネルギーシステム《匠の技×AI》で熟練技術者の技を継承

少子高齢化による労働人口の減少により、日本のモノづくりを支える現場技術者の匠の技は消えていきつつあります。ヤンマーエネルギーシステムは、PwCコンサルティングと共に「匠AIプロジェクト」と称して、次世代に技を継承していくプロジェクトに取り組んでいるのです。

この記事では、ヤンマーエネルギーシステムのAIを活用した技術継承について、PwCコンサルティングのインタビュー記事をもとにご紹介をしていきます。

目次

ヤンマーエネルギーシステムの概要

ヤンマーといえば、農業機械、建設機械、エンジン、エネルギーシステム、マリン製品などを製造・販売している日本大手企業。ヤンマーエネルギーシステムは、そんなヤンマーグループの中でエネルギー事業を担う会社です。ヤンマーエネルギーシステムでは非常用発電機やコージェネレーションシステム、ガスヒートポンプエアコンを主力とし、エネルギー関連システム事業を展開。製品の開発・製造・販売からアフターサービス、遠隔監視に至るまでを一貫して提供しています。

匠AIプロジェクトへの取り組み


ヤンマーエネルギーシステムが力を注いでいるのが機器メンテナンスや遠隔監視といったアフターサービスビジネス。同社のアフターサービスでは、各機器から稼働データを収集・分析し、解析結果をフィードバックすることでより安全に機器を使用するために日々データを活用しています。同社によれば、この取り組みはお客様から高く評価されており、さらなる向上を目指して、外部企業であるPwCコンサルティングの支援を受け、不足部分を補うことでより良い形を実現していけるとのこと。

データ分析を重視しているヤンマーエネルギーシステムが、匠AIプロジェクトに取り組み始めた背景を、同社のカスタマーサポート部コンタクトセンター長 デジタルデザイングループ課長、西川氏は次のように語っている。「匠AIプロジェクトの目的は、発電機の起動に与える気象条件の影響を詳らかにすることです。両者の因果関係がわかれば、不具合が生じる前に適切な対策を講じられると考えました。熟練技術者は経験上、夏場――特に雨期――の湿気が内燃機関*1の起動に影響することを知っていました。しかし、そのことを明確に証明する分析は行っておらず、「匠の感覚値」に依存していたのです。(*1シリンダ内でガソリンなどの燃料を燃焼させ、発生した燃焼ガスを用いてエンジンを稼動させる熱機関)。ー省略ー五感の部分をIoTやセンサーを活用して可視化したいという思いがありました。」
引用:「「五感で覚えた匠の暗黙知」をAIが数値化 ヤンマーエネルギーシステムの取り組み

ヤンマーエネルギーシステムでは発電機から収集した稼動データを基に、現場経験が長いスタッフを匠として、その知見をヒアリングしてAIで分析し,さらにそのデータを発電機の稼働に反映させるというやり方で、人とAIを掛け合わせて五感の可視化を実現。この際、プロジェクト内にて支援事業者としてPwCコンサルティングが加わり、分析アプローチの体系化の支援が行われました。AI化を進めるにあたり、対象データを学習させ、精度を確認しながら改善を重ね、現場の匠のフィードバックを取り入れる――こうしたPDCAの繰り返しが、データ精度の向上につながっています。

匠の技の定量化に成功

今回の取り組みにより、ヤンマーエネルギーシステムは「匠の技」を定量化できたとしています。分析の結果、発電機のエラー要因の一部が気象条件に起因しており、気象が発電機の起動に影響することがデータで裏付けられました。匠にとっての「当たり前のルール」をAIが捉えられたことから、構築したAIモデルは高い信頼性を持つと評価されています。

まとめ

人材不足という社会課題に基づく企業の強い問題意識が、経験豊富な人材とAIを掛け合わせるという新たな取り組みを生み出しました。各機器へのAIを用いたデータの分析によるPDCAの繰り返しはこれからも続き、よりよいものになっていくでしょう。

一方で、製造業においては、データ分析結果を事業に活かす仕組みや分析プロジェクトを統括するマネジメント領域が不足している点が課題とされています。現場仕事の人材に対する対策とは別に、これから加速するICT時代に必要なデータアナリスト人材は各企業争奪戦となります。分析やプロジェクト管理などの経験値のある外部企業に協力を仰ぐことも企業成長の一助になるでしょう。



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