三井のリハウス AI活用事例|「リハウスAI査定」

近年、AI技術を活用したサービスを展開することで、企業の発展につながっている例が多く見られています。中でも、不動産業界大手である三井のリハウスは、AI査定を導入して「リハウスAI査定」というサービスを展開し、さまざまな効果を得ることに成功しています。「三井のリハウスはなぜAI技術を導入したのか?」「どのようなAI技術を導入したのか?」など、疑問を持つ人は多くいるでしょう。

そこで本記事では、三井のリハウスがAI技術を取り入れた理由や導入したAI技術、AI導入のプロセス・ステップについて解説します。AIを導入したことによって得られた効果や、今後の課題や対策などについても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

三井のリハウスがAI技術を取り入れた理由

三井のリハウスがAI技術を取り入れた理由は、主に下記2つとなります。

  • ・サービスの更なる向上
  • ・利用者の負担削減

サービスの更なる向上

三井のリハウスを含めた不動産業界が抱える課題のひとつが、「顧客満足度の低下」です。不動産価格の査定や物件探し、契約処理などに時間がかかった場合、顧客満足度が低下してしまうかもしれません。顧客満足度が低下すると、不動産を売買したり、物件を借りたりする顧客の減少に繋がる可能性は高いでしょう。

顧客満足度を少しでも上昇させるには、顧客が利用するサービスを向上させることが必須です。三井のリハウスは、より良いサービスを提供するために「AI査定」というAI技術を導入し、新たなサービスを展開しました。

利用者の負担削減

三井のリハウスを含めた不動産業界が抱える課題として、「紙の契約書によるIT化の遅れ」も挙げられます。不動産の契約は売買の信用性を担保するため、紙の契約書を交わすことが一般的です。取引する内容によっては、各都道府県や各市町村、法務局などに届け出る必要もあるため、すべてをIT化することは現状難しいと言えます。

そこで、利用者の負担を少しでも減らすために導入したのが「AI査定」です。「不動産売買する前段階の査定」といった、契約書を交わす必要がない部分にAI技術を導入することで、利用者は窓口へ赴かなくてもサービスの利用が可能になりました。

三井のリハウスが導入したAI技術

引用:https://www.mf-realty.jp/news/2019/20191216_02.html

三井のリハウスは、AI技術のひとつである「AI査定」を導入し、「リハウスAI査定システム」というサービスを展開しています。サービスの詳細や導入したAI技術の概要、導入した理由、サービスのメリット・デメリットについて紹介します。

「リハウスAI査定」

三井のリハウスが展開しているサービスのひとつが、「リハウスAI査定」です。「リハウスAI査定」は、顧客が査定したい物件を検索し、階数や部屋番号、氏名、メールアドレスを入力すると、最新の不動産価格を把握できます。

「リハウスAI査定」で導入したAI技術は、「AI査定システム」です。市場データや過去の成約事例などをもとに、AIが複雑なアルゴリズムを用いて、物件の適正価格を瞬時に割り出します。三井のリハウスは、サービスの効率化やより精度の高い情報提供を目的として、「AI査定システム」を導入しました。

メリットデメリット
・精度の高い推定成約価格の算出
・手軽かつスピーディーに利用できる
・営業担当者とのやり取りが不要
・訪問査定や簡易査定より精度は低い

AI導入プロセス・ステップ

  1. 目的や業務を明確にする

まずは、AIを導入する目的と、AIを活用する業務を明確にする必要があります。三井のリハウスでは「不動産売買の推定成約価格を自動的に算出すること」でしたが、「提案する物件を自動的に探し出せるようにする」「顧客からの問い合わせに対応する」など、AIを活用できる場面はさまざまです。企業の問題点に合わせて、具体的な目的や目標を立てることが重要です。

  1. 現状のデータを確認する

現状のデータを確認。AIの学習には、たくさんのデータが必要であるため、導入前に整理しておかなければいけません。

  1. AIツールを選定する

企業の目的・目標に合ったAIツールを選定します。三井のリハウスの場合は、「AI査定」というツールを取り入れました。

  1. テスト導入・検証

AIツールの選定が完了したら、テスト導入や検証を実施します。最後に利用する際のルールやマニュアルを作成し、サービスの提供へとうつります。

  1. 定期的な見直し

AIツールは、「導入したら終わり」ではありません。AIツールの導入後は定期的に活用状況を見直して、サービスを改善していくことが大切です。

三井のリハウスがAIを導入したことによって得られた効果

三井のリハウスが「リハウスAI査定」という、AIを導入したサービスを展開したことによって得られた効果は、以下の4点です。

  • 査定プロセスの大幅な短縮
  • 高水準の精度を達成
  • 他社との差別化を実現
  • 高い顧客満足度を獲得

査定プロセスの大幅な短縮

AI査定を導入した「リハウスAI査定」を提供することで、査定プロセスの大幅な短縮に成功しました。AI査定以外の査定方法である「訪問査定」では、顧客が申し込みしてから査定額が算出されるまで、3日から1週間程度かかってしまいます。

一方、「リハウスAI査定」は、いくつかの情報を入力したらすぐに査定額が算出されます。また、不動産会社への申し込みは不要で、24時間365日サービスを利用することが可能です。査定プロセスの短縮は、企業だけではなく顧客にとってもメリットと言えます。

高水準の精度を達成_MER5.34%

「リハウスAI査定」では、三井不動産リアルティグループで実際に取引されたデータをAIが学習し、推定成約価格を算出しています。不動産の立地や階数、向きなどの特徴に合わせて算出することで、首都圏1都4県でMER4.89%、首都圏エリアを含む全国でMER5.34%という高水準の制度を達成しました。

※MER:機械学習により算出した推定成約価格と実際に成約した価格との差額(誤差)の絶対値を当該成約価格で除した値を誤差率とし、その誤差率の中央値をMER(Median Error Rate:誤差率中央値)としています。MERの値が小さいほど推定精度が高くなります。今回のMERは過去に成約事例がある物件を対象に実証実験を実施し、物件の築年数を限定せず算出したもので、2019年11月1日時点の数値です。

他社との差別化を実現

不動産業界は良くも悪くも、伝統的な手法やビジネスモデルに依存しているケースが多いため、不動産業界でAIを導入すると、従来のアプローチでは実現できなかったサービスを提供することが実現可能となります。

高い顧客満足度を獲得_顧客満足度(2025年で96%)

三井のリハウスは、高い顧客満足度(2025年現在で96%)の獲得にも成功しました。「リハウスAI査定」には、顧客が自宅から手軽にサービスを受けられる点や、営業担当者とのやり取りが不要な点などといったメリットがあるためだと考えられます。
また、AIによるデータ分析を実施することで、顧客の好みや需要を予測し、その情報に基づいてカスタマイズされたサービスの提案が可能になります。AIのカスタマイズされた提案によって、顧客はより満足度が高いサービスを受けられるでしょう。

今後の課題や対策

最後に、三井のリハウスが直面するであろう今後の課題や対策について紹介します。

  • 取引実績が査定の精度に影響する
  • 訪問査定より精度は低くなってしまう

取引実績が査定の精度に影響する

AI査定は、不動産会社の取引実績が少ない場合、算出される査定価格と実際の査定価格に差が生まれやすくなります。推定成約価格は、不動産会社の過去の成功事例をもとに算出されるためです。

三井のリハウスは、2023年度の全国売買仲介取扱件数が38,680件と、全国第1位を記録しているため、現在のところ精度に悪い影響は与えないと言えます。今後、取引件数が増えれば増えるほど、「リハウスAI査定」の精度は高くなっていくでしょう。

訪問査定より精度は低くなってしまう

三井のリハウスが提供している「リハウスAI査定」は、内装のデザインや日当たりなど、物件の細かい特徴は加味されずに査定されます。一方、訪問査定では、不動産会社の担当者が実際に物件を訪れ、具体的な情報を加味して査定するため、AI査定よりも精度は高い傾向です。

「おおよその査定価格が知りたい」という人には向いているサービスですが、「詳しい査定価格を教えてほしい」という人には、あまり向いていません。顧客がAI査定を利用する場合は、「あくまでも参考価格」と認識する必要があります。

不動産×AIの今後の展望

不動産×AIは、ChatGPTやGeminiなどの生成AIが発展することによって、業務の効率化や自動化、コストダウンが期待できます。また、AIだけではなく、取引の透明性や情報の信頼性を向上できるブロックチェーンを組み合わせることも有効です。その結果、売主や買主、仲介する不動産業者も、安全かつスピーディーな不動産取引が可能になります。

まとめ

三井のリハウスは、サービスをより向上させ、利用者の負担を削減するために、AI技術「AI査定」を導入しました。AI査定を導入したことで生まれたサービスが、「リハウスAI査定」です。それらのサービスを展開したことで、三井のリハウスは他社との差別化を図ることに成功し、高い顧客満足度を獲得しました。

しかし、AI査定は実際の取引実績が精度に影響したり、AIを使用しない訪問査定よりも精度が低くなる可能性があったりなど、いくつかの課題もあります。三井のリハウスを含めた不動産業界は、それらの課題を踏まえつつ生成AIの導入なども行い、さらなるサービス向上に努めることが重要です。

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