KURAおさかなファームのスマート養殖とは?次世代型の水産業への取り組みについて解説!

回転寿司チェーン「くら寿司」を運営するくら寿司株式会社は、2021年にAI・IoT技術を活用したスマート養殖事業としてKURAおさかなファーム株式会社を展開しています。

KURAおさかなファーム株式会社では、蓄積されたビッグデータを活用し、AIの予測精度と自動制御の範囲を拡大し、完全自動制御型の養殖システム確立を目指しています。

この技術を国内の漁業者へ展開することで、日本の水産業全体の生産力向上と労働力不足の解消に貢献し、持続可能な食の未来を築くことにつなげています。

その基本的な概要や次世代型の水産業への取り組みについて紹介していきます。

目次

KURAおさかなファームとは?

引用画像:https://www.kurasushi.co.jp/author/004203.html

KURAおさかなファームの基本的な概要

KURAおさかなファームは、回転寿司チェーン「くら寿司」を運営する株式会社くら寿司が、2021年に持続可能な水産資源の確保と高品質な魚の安定供給を目指し子会社化した事業です。

IoTとAIを駆使した次世代型のスマート養殖事業として注目を集めています。

この事業は、単なる食材の調達に留まらず、水産業界が抱える構造的な課題に対しAIを駆使した技術力で解決し、消費者に安全で美味しい魚を安定的に届けることを目的としています。

KURAおさかなファームの展開に至る背景

引用画像:https://www.kurasushi.co.jp/author/004203.html

くら寿司が自ら養殖事業に乗り出し、スマート技術を導入するに至った背景には、日本の水産業が直面する深刻な課題と、一企業としてのサプライチェーン(供給網)の維持という強い目的・背景があります。

天然魚の資源枯渇と価格高騰

  • 世界的な需要増と乱獲規制

近年では、世界的な魚食文化の広がりと国際的な漁獲規制の強化により、天然魚の漁獲量が不安定化し、それに伴い市場価格が変動・高騰するリスクが増大しています。

  • 日本近海の環境変化

気候変動や海水温の上昇などにより、日本近海で獲れる魚種や漁獲量にも変化が生じ、伝統的な漁業が成り立ちにくくなっています。

労働力不足と技術の継承問題

  • 漁業従事者の高齢化と減少

漁業は重労働であり、新規就業者が減少しています。

熟練の技術や知識の継承が難しくなり、日本の水産生産力が低下しています。

  • スマート養殖の役割

IoTやAIによる自動化・省人化は、この労働力不足を補うための不可欠な手段となります。

食の安全・安心へのニーズの高まり

  • トレーサビリティの確保

養殖から加工、販売までを一元管理することで、いつ、どこで、どのように育てられたかが明確になり、消費者に絶対的な安心感を提供することが可能になります。

これらの課題に対し、自社で魚を計画的に生産し、持続可能なサプライチェーンを構築することを目指し、スマート養殖事業が本格的に始動しました。

KURAおさかなファームのスマート養殖の特徴

引用画像:https://www.kurasushi.co.jp/mirai/fish_farm.html

KURAおさかなファームでは、IoT(Internet of Things)とAI(人工知能)を組み合わせた先進的な技術を導入することで、従来の養殖が抱えていた非効率性を劇的に改善し、生産性、品質、コスト効率の全てにおいて革新を実現しています。

IoTを活用したリアルタイム環境モニタリング

養殖事業の成否を分ける育成環境の管理には、水質センサーネットワーク(IoT)が中心的な役割を果たしています。

生簀内に設置された水温や溶存酸素(DO)、pH、塩分濃度などの各種センサーがデータをリアルタイムで収集し、クラウドに集約します。

これにより、遠隔地からでも状況を把握し、異常値を即座に検知することが可能です。

特に溶存酸素の低下などの異常時には、人手を介さず自動で酸素供給装置(エアーレーション)を作動させるなど迅速な対応が可能となり、魚のストレスを軽減し、病気の発生を未然に防ぎます。

結果として、適切な水質維持による死亡率の改善と生産の安定化に貢献しています。

AIによる自動給餌システムとコスト最適化

養殖コストの大部分を占める餌代の削減と効率的な成長を両立させるのが、水中カメラとAI画像認識を用いた自動給餌システムです。

水中カメラが生簀内の魚群を撮影し、AIが魚の活発さや餌の食べ残しの有無といった行動パターンから、食欲と満腹度を解析します。

この解析に基づき、AIが最適な量の餌を最適なタイミングで自動的に投入します。

これにより、餌の無駄(食べ残し)が大幅に削減され、コストが最適化されます。

また、食べ残しが海底に沈むことによる水質悪化を防ぎ、魚病のリスクをさらに低減させる効果もあります。

AIを活用した魚病診断と品質管理

魚病の早期発見と対策は、被害拡大を防ぐ上で欠かせません。

デジタル顕微鏡で採取した魚のサンプル画像をAIが解析し、病原体や寄生虫の種類、感染度合いを迅速かつ高精度で自動識別・診断します。

これにより、熟練の技術者に頼ることなく早期に適切な治療や隔離を実施でき、健康な魚の育成を可能にしています。

ブランド魚の創出と差別化戦略

スマート養殖で実現された安定した育成環境と、ポストハーベスト農薬を使わない独自の配合飼料を組み合わせることで、「くらの恵み」シリーズなどの高品質なブランド魚を開発しています。

安定した環境と良質な餌により、身質が均一で味も安定した魚を育成することが可能になります。

一般的な養殖魚特有の生臭さや脂のくどさを抑えるといった工夫もなされており、天然魚と遜色ない、あるいは天然魚にはない安定性を持つ商品として他社との差別化を図り、付加価値を高めています。

今後の展望と水産業へのインパクト

KURAおさかなファームの取り組みは、単なる企業の取り組みに留まらず、日本の水産業全体に大きなインパクトを与える可能性を秘めています。

データ駆動型(データドリブン)養殖の進化

  • ビッグデータの活用

センサーやカメラ、給餌記録などから得られた膨大なビッグデータをAIが分析することで、生育環境と魚の成長・健康状態の関係をより深く解明します。

  • 予測精度の向上

AIによる給餌や水質管理の予測モデルの精度をさらに高め、魚の成長曲線に基づいた完全自動制御型養殖の実現を目指しています。

将来的には、人間が介入する必要のない養殖システムの確立も視野に入れています。

新たなサプライチェーンモデルの構築

  • 産地と消費地の直結

自社で養殖から販売までを一気通貫で行うことで、流通コストを削減し、最も新鮮な状態で魚を店舗に届けられる究極のサプライチェーンを確立します。

  • 国内の養殖拠点拡大

成功モデルを確立した技術を国内外の協力漁業者に提供・展開することで、日本全国の養殖生産力を底上げし、地域経済の活性化にも貢献することが期待されています。

環境負荷の低減とSDGsへの貢献

  • 資源循環型養殖への移行

陸上養殖においては、水質の再利用や排泄物の処理技術を進化させ、閉鎖循環式のシステムを導入することで、海洋への排出負荷を極限まで低減させることが期待されています。

またこれは、持続可能な開発目標(SDGs)の目標14にある「海の豊かさを守ろう」の達成に直結する取り組みとして、企業の社会的責任(CSR)を果たす役割も担っています。

KURAおさかなファームのスマート養殖は、技術と環境配慮やビジネスとしての合理性を高いレベルで融合させたモデルであり、天然資源が減少しても高品質な魚を安定的に供給するという食の未来を支える重要なパイオニアとして注目されています。

まとめ

KURAおさかなファームのスマート養殖は、単なる技術導入ではなく、日本の水産業が直面する構造的課題(資源枯渇、労働力不足、生産性低迷)に対する包括的なソリューションとして注目されています。

スマート養殖ではデータドリブンな意思決定と自動化を核とすることで、持続可能で高品質な水産物の安定供給を実現し、未来の漁業のあり方も提示しています。

この取り組みは、水産業の革新者としての地位を確立し、消費者に対して安心・安定した美味しさを提供する基盤となっています。

今後も、このスマート養殖技術が他の魚種や他地域に展開されることで、日本の水産業全体の競争力強化と、国際的な食料安全保障への貢献などが期待されます。

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