ディップ株式会社×生成AI「仮想顧客ロールプレイ」:生成AIで営業人材育成を加速する仕組みと挑戦

人材サービスを展開するディップ株式会社は若手の営業社員育成の効率化を目指し、生成AIを活用した「仮想顧客ロールプレイシステム」を導入し若手営業担当者単独で豊富な商談練習ができる環境を実現し、育成工程の削減と営業力の底上げの両立に成功しています。

本記事では導入目的からシステム設計、課題の克服、導入後の具体的な成果、さらには今後の展望までを分かりやすく解説します。

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目次

ディップ株式会社の生成AI導入・営業育成の革新へ

ディップ株式会社は、営業人材の育成を効率化するために生成AIを活用した「仮想ロールプレイシステム」を導入しました。人とAIが協働する新たな育成モデルの全容を紹介します。

生成AI「仮想ロールプレイシステム」とは

引用:https://www.lac.co.jp/lacwatch/casestudy/20240729_004052.html

ディップ株式会社が開発した仮想ロールプレイシステムは、営業担当者がAIを相手に商談練習を行える仕組みです。Azure OpenAIを活用しており、AIが顧客役としてリアルな会話を実現してくれるシステムとなっています。営業担当者はAIとの対話を通じてヒアリング力や提案力を鍛えることが可能です。
実際の顧客対応に近い練習が何度でも行えるため、経験の浅い社員でも短期間で実践的なスキルを身につけられます。また、AIが会話内容を自動で分析し、強みや改善点をフィードバックする仕組みも導入されています。仮想ロールプレイシステムの導入によって従来のOJTに依存した教育体制から脱却し、効率的な営業育成を実現しました。

ディップが人材育成で抱えていた課題

営業人材の育成を支える仕組みが整っていても、現場での実践力が伴わなければ成果には結びつかないため、営業活動の属人化と教育の非効率さが若手育成の壁となっていました。

ベテラン依存の育成構造と若手の実戦経験不足

営業育成の多くが、ベテラン社員によるOJT(実務指導)に依存していました。評価や具体的な指導方法は上司の裁量に任されており、教育の質が担当者ごとにばらつきが生じていました。また、成功事例やノウハウの共有も口頭中心で、データとして蓄積されづらい環境であることも問題でした。このような状況では、担当者の退職や配置転換が生じると育成ノウハウが失われるリスクも高まり、組織全体での育成効率が上がらないという課題も抱えていました。

育成スピードの遅さとOJT工数の増大

営業現場では、商談準備からロールプレイ、フィードバックまでに多くの時間を要し、教育担当者の負担が大きくなっていました。特に新人が複数名入社する時期には、日々の業務と教育業務が重なり、指導が行き届かないケースも見られます。さらに、商談のケーススタディを一つずつ実演する従来の手法では、限られた期間で多くのシナリオを経験することが難しく、育成スピードの向上にも限界がありました。上記の問題が生じたことにより、若手社員が自立するまでに時間を要し、営業力全体の底上げが思うように進まない状況が続いていたのです。

営業デジタル化・データ活用が進まぬ環境

営業現場では、商談内容や顧客情報が紙や個人のメモで管理されるケースもあり、情報の共有や分析が難しい状況でした。そのため、営業戦略の立案や個々の成果分析をデータに基づいて行う耐性が整っていなかったのです。結果として、営業力を全体で底上げするための見える化が進まず、個人の経験や勘に頼った営業スタイルから脱却できない問題を抱えていました。

導入前に直面した検討プロセス

ディップ株式会社では、AIを営業育成に活用する構想を立てた段階から、システムの安全性と信頼性を重視して検討を進めてきました。特に、商談内容や顧客情報などのセンシティブなデータを扱う可能性を踏まえ、セキュリティ面で安心して利用可能な基盤の選定が大きな焦点となりました。

Azure OpenAIを基盤に選定した背景

複数の生成AIサービスを比較した結果、企業向けのセキュリティ基準を満たしており、社内のクラウド基盤とも高い互換性を持つ点が採用に至った主な理由でマイクロソフトの「Azure OpenAI  Service」を採用しました。
また、Azure環境ではデータが外部に流出しない仕組みが整備されているため、営業現場でも安心して利用できると判断されました。さらに、すでに社内で利用実績のあるMicrosoft365との連携もしやすく、導入後の運用負担を軽減できる見込みが立ったことも選定の決め手となりました。

社内AIガバナンス整備とクラウド環境構築の流れ

AIを安全に運用するためには、技術導入だけではなく、社内ルールの整備も欠かせません。AI利用に関する社内ガイドラインを策定し、データの取扱や出力内容の確認手順を明確化しました。同時にクラウド環境のセキュリティ強化を進め、アクセス権限の細分化やログ監査体制を整備することで、情報漏えいリスクを最小限に抑えています。

パートナー・ベンダー選定と試行運用ステップ


生成AI開発の際は、技術的な支援体制を確保するため、パートナー・ベンダー選定を用いて外部パートナーを選定しました。技術力の高さだけではなく、自社の営業プロセスや人材育成を深く理解したうえで継続的に回線提案してもらえるペンダーを重視した結果、最終的に株式会社ラックが選定され、同企業の協力を得ながら開発・検証を進めました。試行段階では、限られた部署でロールプレイシステムを導入し、回答の品質や操作性を検証しています。現場のフィードバックを基に改善を重ねることで、実際の営業現場に即したAIシステムとして完成度を高めていきました。
この段階的な導入プロセスが、スムーズな社内展開につながる大きな要因となっています。

システム設計のポイントと運用体制

本章ではディップ株式会社で導入した仮想ロールプレイシステムの具体的な仕組みと、どのような流れで全社運用を進めていったのかについて解説します。

仮想顧客を使ったロールプレイの仕組み

ディップ株式会社が導入した仮想ロールプレイシステムでは、AIが多様な顧客役を演じ、営業担当者と仮想の商談を行います。AIは顧客の反応や質問に即座に対応し、営業担当者は実際の商談に近い状況で練習可能です。自由に商談練習が可能な環境が整えられたことにより、限られた時間とリソースで多くの商談シナリオを経験できるようになり、育成の幅と深さの向上が期待できます。

評価・フィードバックの自動化

仮想商談後、AIは営業担当者の対応を分析し、フィードバックを自動で生成します。評価・フィードバックが自動化されることで営業担当者の負担は軽減され、迅速かつ客観的な評価が可能となりました。また、フィードバックは個別の強化ポイントを明確にし、次回の商談に活かすことが可能です。

社内での導入スケジュールと展開

システムの導入は段階的に実施され、まずは一部の営業チームで試行的に運用を実施しました。試行運用によって得られた結果を基にシステムの改善を図りました。その後、全社展開に向けて必要なトレーニングやサポート体制を整備し、スムーズな導入を実現させています。現在も社内のIT部門と連携し、システムのさらなる安定稼働と継続的な改善が行われています。

導入段階で直面した課題と対応策

ディップ株式会社が生成AIを導入する過程では、回答品質やデータ管理、操作習熟など、複数の課題に直面しました。特に解決必須とされた課題は以下の3つです。

  • AIの回答品質と営業現場への適用性
  • 社内データの扱いとセキュリティ管理
  • 操作習熟・定着に向けた教育体制の構築

ディップでは試行段階で持ち上がった課題を整理し、具体的な対応策を講じることで、営業現場でのAI活用を円滑に進めています。

AIの回答品質と営業現場への適用性

導入当初、AIが回答する内容の品質にはバラツキがあり、営業現場での実践的な活用に課題がありました。特に商談のシナリオにおいて、AIが提供する回答が現実の営業現場とは大きくかけ離れている場合があり、AIの回答をそのまま信頼することに不安を感じる場面が出てきていました。課題に対処するため、AIの学習データを営業現場の実際の商談データや過去の成功事例を基に再構築しました。さらにAIの出力を営業担当者が確認・修正できるようなインターフェースも導入し、回答を現場の実情に即したものとなるよう工夫しています。結果、AIの回答品質が向上し、現場での適用性が高まりました。

社内データの扱いとセキュリティ管理

営業活動に関するデータは機密性が高く、データの取り扱いやセキュリティ管理も重要な課題のひとつでした。特に顧客情報や商談内容などセンシティブなデータを学習させる際の情報漏洩のリスクへの対応は必要不可欠です。上記課題に対しては社内データの取り扱いに関するガイドラインを策定し、AIに投入するデータの匿名化や暗号化を徹底しました。また、データへのアクセス権限を厳正に管理し、アクセスログを定期的に監査する体制も構築しています。

操作習熟・定着に向けた教育体制の構築

AIを導入しても、操作方法や活用法を習得しなければ効果的な利用は難しいです。AIに対しては抵抗感や操作に対する不安を抱く人も存在し、積極的な活用をしないケースもありました。そこでAIの操作方法や活用事例を含む研修プログラムを全営業担当者に対して実施しました。さらに導入後も定期的にフォローアップ研修を行い、操作スキルの向上とAI活用の定着化を図る取り組みも実施しています。

導入効果と具体的成果

AIを活用した営業育成施策を展開した結果、育成時間の削減のみならず、多方面で成果が表れています。

育成時間の削減効果

生成AIを用いた仮想ロールプレイングシステムの導入により、営業職では1人あたり月23時間の業務削減効果が確認されています。従来は教育担当者が実施していた商談練習やフィードバックをAIが代替することで、短期間で実践的なスキルを身に付けられるようになりました。

育成担当者の負担軽減

教育担当者が商談ケースの準備・模擬演習の実施・フィードバック文書の作成に費やしていた工数が大幅に削減されました。AIが模擬商談やフィードバックの初稿を自動生成することで、担当者はより価値の高い育成設計・個別指導に集中できています。

商談スキル向上・成果の可視化

AIロールプレイでは、各社員の回答内容や改善履歴をデータとして蓄積し、成長の可視化が可能になりました。数値評価をもとにしたフィードバックが標準化され、社員一人ひとりの課題を的確に把握できるようになっています。

今後の展望「AIと人材育成の融合へ」

ディップ株式会社では営業育成に留まらず、全社的なAI活用人材育成モデルの定着を目指しています。例えば全社員が日常的にAIを活用するための教育プログラムを作成し、人事・カスタマーサービス層まで横展開を図っています。AIが個別にスキルを可視化・分析して次の成長フェーズを提示することで、人材育成の質とスピードを同時に向上させることが狙いです。

まとめ

ディップ株式会社が導入した生成AIによる仮想ロールプレイングシステムは、若手営業育成のあり方を刷新するものとなったことは間違いありません。組織が直面していたベテラン依存・育成スピードの遅れ・デジタル化の停滞期といった課題に対して、AIを基盤とするシステム・運用体制を構築することを決断しました。導入段階で想定された課題を克服した上で実際に導入した結果、育成時間削減・担当者の負担軽減・スキル可視化といった具体的成果をもたらしました。今後もAIと人材育成の融合が会社全体を成長させるきっかけになることでしょう。

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