電通グループの統合AIソリューションブランド「∞AI」について解説!

電通グループは、近年のテクノロジーの急速な進化に対応し、企業の持続的な成長を支援するため、独自のAI戦略として「AI For Growth 2.0」を推進しています。

「AI For Growth 2.0」は、AIを単なる業務効率化のツールとしてではなく、企業の「Growth(成長)」に貢献する価値創造の核として位置づけ、マーケティングの全工程をAIによって革新する電通グループ独自の戦略のことを指します。

この戦略の核となるのが、統合AIソリューションブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」です。

その特徴や戦略について紹介していきます。

目次

∞AIとは?

引用画像:https://www.dentsudigital.co.jp/services/data-ai/AI/mugen-ai

「∞AI」は、株式会社電通デジタルが中心となって開発・提供しているAIソリューション群のブランド名です。

これは、単一のツールではなく、生成AIやAIエージェント技術を基盤として、企業のデジタルマーケティング、顧客体験(CX)設計、クリエイティブ制作、そして業務効率化にいたるまで、マーケティング活動のあらゆるフェーズを高度化・効率化することを目指した統合プラットフォームです。

ブランド名でもある∞AIが示すように、電通グループではAIとの対話を通じて、分析・戦略立案、施策実行、効果検証・改善のPDCAサイクルを無限に進化させることをコンセプトとしています。

∞AIの基本的な特徴とコンセプト

引用画像:https://www.dentsu.co.jp/labo/ai_for_growth/index.html

AIエージェント技術の活用

∞AIの最大の特徴は、多くのソリューションにAIエージェント技術を導入している点です。

AIエージェントは、単に質問に答えるだけでなく能動的にタスクを理解し、必要なシステムやデータにアクセスし、タスクを実行する能力を持ちます。

これにより、電通デジタルの担当者やクライアント企業の担当者は、AIと対話するだけで、複雑なマーケティング施策の分析・立案・実行を一気通貫で支援してもらうことが可能になります。

国内電通グループ独自のAI戦略との接続

∞AIは、国内の電通グループが提唱するAI戦略「AI For Growth 2.0」の中核を担っています。

この戦略では、「People Model」や「Creative Thinking Model(創造的思考モデル)」といった、電通グループ独自のデータを基に開発された高度なAIモデルをアセットとして活用しています。

  1. People Model

約15万人の大規模調査データ(PDM Tunes)をLLMでファインチューニングし、1億人規模の高解像度なペルソナを仮想再現するAIモデル。

  1. Creative Thinking Model

電通のコピーライターやプランナーの創造的思考プロセスを学習したAIモデルで、高度な広告コピーやビジュアルアイデアの生成を可能にします。

∞AIでは、これらの独自の「知(インテリジェンス)」と連携することで、他の汎用的な生成AIツールにはない、顧客理解に基づいた精度の高いマーケティング支援を実現しています。

∞AIを構成する主要なソリューション群

∞AIブランドは、マーケティングの多様なニーズに対応するため、目的や機能に応じて多数の個別のソリューションで構成されています。

ソリューション名役割・機能
∞AI Adsデジタル広告クリエイティブの制作と最適化を支援。特に、バナーや縦型動画などの制作プロセスをAIエージェントとの対話形式で効率化し、広告効果の最大化を目指します。
∞AI Chat企業独自データとナレッジを活用した生成AIチャットソリューション。社内業務の生産性向上から、顧客接点でのAIコンシェルジュ機能まで、幅広い用途で利用されています。
∞AI Customer Twin対話可能な「仮想顧客AI」の構築。多様なデータを取り込み、顧客一人ひとりの心理・行動特性を忠実に再現。仮想顧客との対話型インタビューや調査を可能にし、広範な生活者のインサイトに近い回答生成を実現します。
∞AI Social企業やブランドのSNS運用を強化。SNS投稿文の自動生成、企画立案、効果分析などの業務をAIで支援し、炎上リスク管理などにも活用されます。
∞AI LPランディングページ(LP)制作の最適化。LPの分析、コンテンツの生成、改善案の提案をAIで実行し、制作・改善サイクルを高速化・高度化します。
∞AI Marketing Hubマーケティング施策と顧客体験(CX)設計の高度化。People ModelなどのAIペルソナを基に、最適なマーケティング戦略と顧客ジャーニーの策定を効率化します。
∞AI MC Planningマーケティングコミュニケーション施策の企画立案支援。AIエージェントとの対話を通じて、一連の施策プロセスを企画し、アイデア創出を支援します。

AI For Growth 2.0戦略における∞AIの位置づけ

∞AIは、電通グループ全体のAI戦略であるAI For Growth 2.0において、「クライアントサービス」レイヤーの核となるアプリケーション群として位置づけられています。

電通グループは、「人間の知(Intelligence)とAIの知の掛け合わせによって、顧客企業や社会の成長に貢献する」というビジョンを掲げています。

このビジョンに基づき、∞AIは以下の点で重要な役割を果たしています。

人とAIの「高め合う」サイクルの実現

電通グループは、AIを単なる自動化ツールではなく、人の思考プロセスやノウハウをAIにインプットし、進化したAIから人がまた学ぶという「人とAIが高め合う」サイクルを重視しています。

  1. AIへのインプット

∞AIは、電通グループが長年培ってきたマーケティングの知見、クリエイティブのノウハウ、膨大な調査データといった「人間の知」を学習し、組み込んでいます。

  1. 人へのフィードバック

∞AIが生成する高度なアイデアや分析結果は、プランナーやマーケターに対して新たな視点や効率的な実行手段を提供し、「人間の知」をさらに進化させます。

統合マーケティングAIエージェントへの進化

電通グループは、「People Model」「Creative Thinking Model」といった独自の基盤AIモデル群と、∞AIを含む各アプリケーション群とのデータ連携を図ることで、ユーザーとの対話を通じて自律的に最適な答えを導き出す「統合マーケティングAIエージェント」の開発に取り組んでいます。

これは、従来、複数の部門やツールを横断していたマーケティングのプロセス全体を、一つの高度なAIシステムが自律的に実行・提案することを目指すものであり、∞AIはその実行系ソリューション群として、この最終目標の達成に向けた重要な役割を担っています。

導入メリットと今後の展望

企業にとっての導入メリット

企業が「∞AI」を導入することで得られるメリットは多岐にわたります。

  1. 顧客理解の深化

「∞AI Customer Twin」を活用することで、時間やコストの制約なく仮想インタビューが可能になり、より深く、広範なインサイトを獲得できます。

  1. 圧倒的な業務効率化

「∞AI Ads」「∞AI LP」「∞AI Social」などにより、クリエイティブ制作、コンテンツ生成、施策改善などの定型・反復業務が劇的に効率化され、人的リソースを戦略立案などの高度な業務に集中させることができます。

  1. アイデアと精度の向上

「AIQQQ STUDIO」や「Creative Thinking Model」との連携により、量と質が向上したマーケティングアイデアを迅速に創出でき、施策の成功率を高めることができます。

技術的なパートナーシップ

∞AIは、その開発においてGoogle CloudのVertex AIなどの先進的な技術を採用しています。

これにより、最新のLLM(大規模言語モデル)や高性能なAIインフラを柔軟に取り入れ、ソリューションの機能拡張と安定性を実現しています。

また、Anthropic社のClaude 3などの最新LLMも取り入れ、多様なニーズに応じた機能拡張を進めています。

今後の展望

∞AIは継続的にアップデートされており、AIエージェントが自動的にデザインやコーディングを行う機能の追加など、機能が拡張され続けています。

今後も、国内電通グループが発足した「dentsu Japan AIセンター」を中心に、約1,000名の専門人財がAI開発・活用を推進することで、「∞AI」は日本のマーケティング業界におけるAIネイティブ化を牽引していくことが期待されています。

まとめ

電通グループの「∞AI」は、単なるチャットボットや生成ツールではなく、国内電通グループの独自の知見とデータに基づいた高度なAIモデルを基盤とし、AIエージェントとの対話を通じてマーケティングの全プロセスを統合的に支援・進化させることを目指した、次世代の統合AIソリューションブランドです。

Google Cloudなどの最新テクノロジーを取り入れながら、今後も統合マーケティングAIエージェントへの進化を目指しています。

これは、マーケターがAIとの対話だけで複雑なマーケティングプロセス全体を自律的に実行できる未来であり、∞AIは日本の企業がこの「AIネイティブなマーケティング」へ移行するための最も強力なパートナーとして期待されています。

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