日本人女性の乳がん罹患数は2024年予測の中で最も多く91,100人でした。9人に1人の女性が生涯で乳がんにかかるといわれています。また、死亡率もがんの中でも4番目に多いとされています。
この記事では、今話題のAIによる乳がん検診のサポートシステム、Smaopi(スマオピ)についてご紹介します。


出典:「がんの統計2025」
Smaopi(スマオピ)とは
今話題のAIによる乳がん検診サポートシステムのSmaopiとは、株式会社フィックスターズが 慶應義塾大学との共同研究成果を社会実装するために設立した合弁会社、株式会社Smart Opinionの「スマートオピニオン METIS Eye」のことです。乳房超音波 (エコー)検査の医師の診断をAI(人工知能)が支援するというシステムで、2025年8月19日より慶應義塾大学予防医療センターで運用が開始されました。

出典:Smaopi
AIが乳がん検診の常識を変えるとは
▣乳がん検診のハードル
乳がん検診は、「視触診」「マンモグラフィ(乳房X線)検査」「超音波検査」が主な検査の種類です。その中でも、「マンモグラフィ(乳房X線)検査」は特に知名度が高く検診で利用する方が多いのが実情です。しかし、乳腺を圧迫させて撮影するという技法ゆえに痛みを伴うことがあり、嫌厭されがちな検査です。厚生労働省の調査によると、日本人の乳がん検診受診率は4割程度。他国の6割~7割という数字に比べると圧倒的に受診率が低いのです。

出典:厚生労働省「がん検診の国際比較」
では、なぜ日本人は乳がん検診を受けないのでしょうか。主な理由は、「時間がない」・「費用が高い」・「マンモグラフィが痛い」・「他人(医師)に胸を見せるのが恥ずかしい」・「症状がないから必要ないと感じる」・「自分は乳がんにかからないと信じている」・「がんになるのが怖い」といった心理的・物理的な障壁があるためです。
この中で、「マンモグラフィが痛い」と感じる部分に関しては、技術的に改善ができます。主な検査技法として視触診やマンモグラフィ検査が推奨されていますが、浸潤がん(腫瘤)を検出するにはマンモグラフィ検査よりも超音波検査の方が優れていると言われています。その理由は、日本人女性の体の性質上、デンスブレスト(高濃度乳腺)*¹の人が多いとされているためです。日本人女性の8割がデンスブレストであるともいわれているほどです。マンモグラフィはしこり(腫瘍)を白く映し出しますが、乳腺組織も同じように白く映るため、乳腺が密集している乳房では、しこりが乳腺に隠れて見えにくくなることがあります。そのため、乳腺濃度が比較的高いとされる40代未満では、マンモグラフィ単独の検査はあまり推奨されません。そして実際には、50代や70代といった年齢層でも「デンスブレスト(高濃度乳房)」の方は少なくないため、年齢にかかわらず乳腺濃度の高い方では、超音波(エコー)検査などを併用することが有効とされています。この超音波検査をさらに有効なものにすることができるのが、「Smaopi」に使われるAI技術の医療機器プログラム「METIS Eye」です。
*¹乳腺組織の濃度が高い乳房のこと。
▣超音波検査×Smaopiの可能性
現在の超音波検査は医師や技師の経験への依存度が高いため、検査結果の精度にばらつきが生じやすいという課題があります。その課題を解決するために開発されたのがAI技術の医療機器プログラム「METIS Eye」です。医師や技師による超音波検査の検査技法に「METIS Eye」のプログラムを組み込むことで2つの目によりがんの疑いのある病変へアプローチができるようになりました。大量の画像データや病変を見分ける作業を人だけで行うには限界があります。「METIS Eye」がそこをサポートすることで、受診者は傷みなく、また、医師や技師は第二の目を持ってより病変の発見率を上げることができます。
まとめ
がんは早期に発見され適切な治療が行われれば、治る可能性が非常に高い病気です。初期の乳がんでは90%以上の人が完治し、10年生存率も90%を超えるという報告があります。しかし、進行して他の臓器に転移すると治る可能性が低くなるため、定期的ながん検診や自己チェックによる早期発見が何よりも重要です。Smaopiによる新たな乳がん検診の形は乳がんによる死亡率を下げるという大きな役割を持っています。何よりも、AIによるサポートで検査自体の精度が上がり、受診しやすい検診環境が整うことで受診者が抵抗なく検診を受けられるようになります。
医療の分野におけるAI技術はまだまだ発展途上ではありますが、予防医療や病変の早期発見など活躍の可能性が大いにある分野です。


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