在宅医療の分野でもAIが人をサポート:AIによる業務効率化でよりよいケアを実現

超高齢化社会の今、医療の現場では医者・看護師・医療事務など現場を支える担い手が少なくなってきてることと、病院経営の困難な状況もあり、在宅医療の分野が急速に拡大してきています。

この記事では、在宅医療の現場で医療従事者をサポートするAIのサービスをご紹介します。

目次

在宅医療は、患者にとって「住み慣れた場所で医療を受けられる」理想的な形として普及してきています。

しかしその裏側では、限られた時間での訪問膨大な記録作成多職種との連携急変への備えなど、

医療従事者に高度な判断と継続的な負担が求められているというのが現状です。この“見えにくい負荷”を軽減し、

ケアの質を維持・向上させる手段として、近年AIの活用が現実的な選択肢として広がりを見せています。

◎eWeLLの生成AIサービス

引用:eWeLL


eWeLLは訪問看護/在宅医療向けのクラウド型業務支援ツール「iBow(アイボウ)」を展開する企業で、このiBowに生成AIを組み込んだ機能を次々リリースしています。生成AIは、医療者の「文章作成・計画立案」といった業務負担を大幅に軽くする目的で活用されています。
たとえば、eWeLLが提供する「AI看護計画/AI看護報告」は、訪問看護の計画書や報告書を生成AIで自動作成し、業務時間を大幅に短縮しています。また、「AI訪問スケジュール」機能では、患者状況やステーション位置を考慮した最適ルートをAIが提案し、多職種連携も効率化しています。

AI訪問看護計画(生成AI)はワンクリックで訪問看護計画書(1ユーザーのケアプラン)を自動生成。看護師が従来15分程度かけて書いていた計画書が、3分程度で完成するようになった例もあります。経験が浅い看護師でも一定レベルの質の計画が作れるようになり、業務の平準化・育成支援にもつながります。リリースから24日で10,000件以上の利用があったとのことからも、高いニーズがあることがわかります。

2024年10月から提供が開始された、AI訪問看護報告(生成AI)は過去の訪問記録をAIが解析し、要点を抽出・要約して文章化。ミスの減少や文書の品質向上も期待されています。利用者アンケートでは、1件の報告書で平均20分ほど短縮、1ステーションあたり月に23時間以上の時短効果が確認されています。

2024年末には、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士向けに、リハビリ報告書の自動生成機能も追加されました。これらの職種は訪問件数が比較的多く、書類負担が大きいため、AIによる自動化の恩恵がより大きいとされています。

AI活用基盤『IB-Link(アイビーリンク)』ヘルスケア向けAIアプリケーション「D-Medical」搭載Copilot+ PC(Dell Latitude 7455)

引用:デルテクノロジーズ


株式会社 日本AIコンサルティングが開発したエッジAI活用基盤『IB-Link(アイビーリンク)』を採用したヘルスケア向けAIアプリケーション『D-Medical』によって、在宅医療現場にあらたな業務改革が生まれました。日本マイクロソフト株式会社およびデル・テクノロジーズ株式会社が推進する共創プログラム「Project+」において、『IB-Link』と『D-Medical』を搭載したCopilot+ PC(Dell Latitude 7455)の活用により実現したサービスです。

このサービスを取り入れたことで、実際に宮崎県宮崎市の船塚クリニックにおいて、在宅医療の業務負荷を軽減することに成功したという事例もあります。1日10~20件の訪問診療と予約制の外来診療を少人数で回す船塚クリニックでは、訪問スケジュール計画業務・診療記録作成業務・在宅療養計画書の作成業務などが大きな負荷であり課題でもありました。
「D-Medical」は在宅医療でよくある定型業務(スケジュール計画・診療記録・療養計画書作成など)をAIで支援・自動化するアプリです。大規模クラウドではなく、AI処理をPC内部で完結(エッジAI)させる設計により、個人情報や医療情報の安全性にも配慮しています。

「完全オフラインの状況で動作し、ノートPCひとつで様々な生成AI機能を安全かつ簡単に利用できる」、このような状況でも利用できるAIが、看護師や医師のをサポートする力強い味方となったことで、業務の改善に至ったと考えられます。

◎DermaSensor(アメリカ)

引用:DermaSensor, Inc.


2024年、アメリカの保健福祉省傘下の政府機関で医療機器として安全性と有効性の評価を行う、FDA(アメリカ食品医薬品局)がDermaSensorという皮膚がん診断ツールを承認したことで話題になりました。臨床試験において 200 種類を超える皮膚がんの検出で高い感度を実証しているとの報告がされており、期待がされています。

DermaSensorはAI を使った光スペクトル解析デバイス(ハンドヘルド機器)で、病変の細胞および細胞内特性を識別することで、皮膚癌(メラノーマを含む多数の皮膚癌)の検出に役立つツールとして認可されました。

まだ、実用化には程遠いですが、端末一つで検査ができるようになり、一次的な検査を患者が自身で行えるようになったり、医師がその場で診断を下すことのできるクオリティの端末が開発されれば、病院にいかずとも診断を受けられ、在宅のままで治療を受けられるようになるかもしれません。

在宅医療の現場では、慢性的な人手不足や書類業務の多さが、医師・看護師の大きな負担となっています。生成AIやエッジAIを活用したツールは、“見えにくい業務負担”を軽減し、医療者が疲弊せずにケアを続けるための現実的な選択肢になり始めています。AIの導入は効率化だけでなく、在宅医療を「続けられる医療」に変えるためのインフラ整備とも言える段階に入っています。

また、AI技術の進化により、在宅医療は「人の経験と勘」に頼る領域から、「データとAIが支える医療」へと少しずつ姿を変えています。AIを活用した新たな端末が開発されることにより、オフラインで、その端末一つと医師の経験と知識の両刀でその場で診断を下すことも可能になる日が来るかもしれません。

今後はAIをどう使うかが、在宅医療の質と持続性を左右する重要なポイントとなるでしょう。


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