「電話対応で従業員の手が止まり、本来の業務が進まない」 「電話対応が多く、スタッフが疲弊している」
企業が抱える電話の課題は、医療現場でも発生していました。
年間の外来患者数50万人を超え、救急車の受け入れ数が全国トップクラスの湘南鎌倉総合病院は、1時間に最大700件超の電話が殺到します。その結果、電話がつながらず、患者の不満とスタッフの疲弊という課題がありました。
そこで、同病院はAI電話を導入したところ、課題を解決し、クレーム0件と残業改善という成果を達成しました。
本記事では、湘南鎌倉総合病院の事例をもとに、AI電話の導入のポイントを解説します。
【AI電話を導入前】湘南鎌倉総合病院の課題

では、なぜ電話対応が困難だったのでしょうか。同病院が抱えていた課題は以下の通りです。
- 膨大な電話の件数
- 電話による業務中断と疲弊
- 電話応対の限界
それぞれの課題について詳しく見ていきましょう。
膨大な電話の件数
以下の表に、医療機関の電話の件数や未応答率などをまとめました。
| 課題 | 状況 |
| 1日平均の電話件数 | 1日約1,200件 (他の医療機関) |
| 1時間の電話件数 | 最大約700件以上 (湘南鎌倉総合病院) |
| 未応答率 | 約32% |
| 集中する時間帯 | 外来や予約と重なる午前中に集中 |
湘南鎌倉総合病院も、電話全体の3割以上が未応答であり 、膨大な電話の件数がスタッフの負担となっていました。
電話による業務中断と疲弊
スタッフは目の前の患者に対応しながら、医師からの依頼にも応え、電話に出られない状況が日常的でした。
深刻なのは、スタッフのストレスです。電話に出られなかった患者からクレームを受け、対応に時間を取られてしまい、現場を疲弊させていました。
さらに、折り返しの電話対応も負担となっていました。特に午後4時30分以降は、多い日で30件近い折り返しの電話が発生します。
結果的にスタッフは残業してまで電話の対応に追われていました。
電話予約・応対の限界
湘南鎌倉総合病院では、40科目以上ある診療科ごとに応対ルールが異なっていました。患者からの問い合わせも多岐にわたるため、さらに応対ルールは複雑になっています。
こうした状況で、スタッフの負担と品質にばらつきが生じていました。
特に電話を受けるスタッフは、他の業務で忙しく、応対の品質を一定に保つことが課題となっています。
【Dr.JOY】湘南鎌倉総合病院が選んだAI電話サービス

湘南鎌倉総合病院は直面した課題を解決するために、Dr.JOY株式会社(以下、Dr.JOY)が提供する医療機関特化型AI電話サービス(以下、AI電話)を選びました。
ここでは以下の内容について説明します。
- Dr.JOYのAI電話の仕組み
- 医療機関特化型とは?
- 従来のIVRとAI電話の違い
- 湘南鎌倉総合病院がDr.JOYを選んだ理由
これを読めばDr.JOYのAI電話が、湘南鎌倉総合病院の課題をどう解決するか分かります。
Dr.JOYのAI電話の仕組み
Dr.JOYのAI電話は、3つの流れで電話対応を効率化します。
①AIによる一次応答
まず、患者からの電話はAIが受け付けます。従来の自動音声とは異なり、まるで人間と話すような自然な会話で、用件のヒアリングが可能です。
AI電話は24時間365日稼働しているため、深夜や早朝などでもつながらないという問題を解消します。
さらに、最大100回線まで同時に応答できるため、回線がパンクすることもありません。
②情報抽出とテキスト化
AI電話は、患者との通話内容を自動で文字に起こし、同時に予約情報などのデータを抽出して管理します。
すべての通話記録がテキストとして残るため、スタッフは電話応対が終わった後でも、PCやiPadなどで正確な内容を確認できます。
忙しい業務の合間での聞き間違いや、重要な用件の見落としといったエラーを防ぐことが可能です。
③対応の振り分け
最後に、AIはヒアリングした用件に応じて、対応を振り分けます。
例えば、予約変更のようにAI電話だけで対応が完結できる用件は、その場ですぐに処理できます。
一方で、専門的な相談や複雑な問い合わせ、あるいは緊急性が高いとAIが判断した内容については、待たせることなく適切な担当者へ、即時に電話をつなぐことが可能です。
医療機関特化型とは?
医療機関特化型とは、複雑な診療科のルールや医療用語に対応できるよう設計されたAI電話サービスのことです。
Dr.JOYのAI電話が医療機関特化型と呼ばれている理由を以下の表にまとめました。
| 理由 | 詳細 |
| 分岐設計 | 現場のヒアリングに基づいた対話シナリオを作成するため、診療科の複雑な分岐に対応 |
| 医療用語の対応 | 各診療科の会話記録や医療用語をシステムに抽出高齢患者の発話も分析し、AIの認識の精度を向上させる調整 |
Dr.JOYのAI電話は、現場のヒアリングに基づいて各診療科の分岐に対応できる対話シナリオを構築しています。
従来の自動音声とAI電話の違い
自動音声とAI電話の違いを以下の表にまとめました。
| 比較項目 | 従来の自動音声 | AI電話 |
| 操作方法 | 「1番を押して〜」といった指示に従い、ボタンを押す必要があった | 自然な会話で応対でき、ボタン操作は不要になった |
| シナリオ | 事前に決められた選択肢しか対応できず、患者が細かい状況を伝えたい場合に不満が発生していた | 話し言葉でも認識が可能で、医療用語や複雑な問い合わせにも、現場のヒアリングに基づいたシナリオで対応可能になった |
| 患者ストレス | つながらない、待たされるといったクレームの要因となっていた | 24時間つながるため、電話がつながらないという苦情やストレスが解消された |
従来の自動音声はボタン操作が必須でした。決まったシナリオしか対応できず、患者のストレスとなっていたのに対し、AI電話は自然な会話が可能です。
湘南鎌倉総合病院がDr.JOYを選んだ理由
湘南鎌倉総合病院がDr.JOYを選んだ理由を以下の表にまとめました。
| 理由 | 詳細 |
| 問い合わせへの対応 | 自然な会話で、患者の安心感を担保現場の通話内容や医療用語をシステムに反映させ、複雑な課題を解決 |
| 運用サポート | 導入前のヒアリングにより、病院独自の対話シナリオを作成導入後も担当者が、入電データを分析・最適化を続ける運用サポート導入後の混乱を防ぐため、ポスターや資料をデザイナーが制作 |
| 将来的な拡張 | 多言語対応やさらなる自動化など、継続的な機能拡張の方針が合致Dr.JOYは病院DXアワード2025で優秀賞を受賞するなど、業界での高い評価と信頼性 |
湘南鎌倉総合病院は、Dr.JOYのAI電話を取り入れることで、単なる業務効率化ではなく、パートナーとして位置づけています。
AI電話の導入プロセス

AI電話の導入プロセスは、以下の通りです。
- 目的の設定
- 対話シナリオの構築
- AI電話を導入時の課題と改善
貴社に取り入れるヒントになるので、確認しておきましょう。
目的の設定
湘南鎌倉総合病院の理念は、断らない医療です。
しかし、1時間に最大700件もの電話が殺到し、30%以上が対応できないという危機的状況に直面していました。
電話がつながらないことで患者が他院へ流出するなど、理念の維持が困難でした。
AI電話の導入は、上記の課題を解決し、理念を実践するための新たな取り組みとして位置づけられました。
対話シナリオの構築
現場の実情に即した対話シナリオの設計が、AI電話の導入を成功させました。
湘南鎌倉総合病院は診療科が40科目以上もある総合病院であり、それぞれ応対ルールが異なります。よって、複雑なルールをAI電話に学習させることが必要でした。
約20名のスタッフが各診療科ごとに電話での会話の記録や医療用語をピックアップし、AI電話のシステムに取り込みました。
上記により、医療現場の複雑な問い合わせや、専門的な質問に対応できるAI電話が構築されました。
AI電話の課題と対策
短期間での導入と医療現場の複雑性から、初期の段階ではAI電話の認識精度や想定外の質問への対応など、いくつかの課題が発生しました。
| AI電話の課題 | 対策 |
| AI電話の音声認識精度(特に高齢者) | 高齢患者の発話を分析し、AI電話の認識精度を高めるため調整を実施 |
| 想定外の質問への対応 | 導入後も担当コンサルタントが継続サポート入電データを定期分析し、対話シナリオの追加や最適化を実施 |
| 運用ノウハウの共有 | Dr.JOY側が専用サポート窓口で問題解決に対応AI電話ユーザー会を定例開催し、ノウハウ共有とフィードバックを確保 |
Dr.JOYは導入後も伴走型のサポートを維持し、入電データの分析や対話シナリオの最適化を継続的に実施しています。
【AI電話の効果】湘南鎌倉総合病院の事例

湘南鎌倉総合病院がAI電話を導入した結果、以下の効果がありました。
- クレーム0件を達成
- 残業改善に貢献
- 院内連携の向上
湘南鎌倉総合病院が断らない医療を目指した結果を、詳しく見ていきましょう。
クレーム0件を達成
AI電話の導入により、患者からの電話対応に関するクレームをゼロにすることに成功しました。
導入前は電話がつながらないというクレームが毎月必ず寄せられており、患者満足度の低下が課題となっていました。
しかし、AI電話による24時間365日体制の一次受付を構築した結果、いつでも確実に電話がつながる病院として、患者から好評をいただいています。
残業改善に貢献
AI電話を導入する前は、午後4時30分以降に30件ほどの折り返し電話が発生し、残業の原因となっていました。
以下の表はAI電話を導入前と導入後の残業改善の状況をまとめたものです。
| 導入前 | AI電話を導入後 |
| 折り返し電話が1日最大30件あった | 電話対応の必要がなくなり、残業を削減した |
| 電話の対応に追われていた | 電話の対応から解放され、業務に集中できるようになった |
| 時間に追われていた | 外来患者の受付や相談に時間を割けるようになった |
スタッフからは「時間に追われる状態から、時間を追う状態へと変えることができた」「業務を完全に遂行できるようになった」という声が上がっています。
院内連携の向上
AI電話は、電話の応対を自動化するだけでなく、部署間の連携をスムーズにしました。
以下の表はAI電話を導入前と導入後の連携を表にまとめたものです。
| 導入前 | 導入後 (AI電話 + iPad) |
| 電話を受けたスタッフが内容を紙に書き出す手間があった | AI電話が受けた予約変更やキャンセル連絡が、各診療科のiPadにリアルタイムで表示されるようになった |
| 伝達に時間がかかり、担当者との連携が遅くなることもあった | iPadで問い合わせ内容を一目で確認でき、伝達内容の優先順位をつけやすくなった |
| 言った、言わない問題や伝達ミスが発生するリスクがあった | 情報がテキスト化・共有されることで、伝達ミスが削減され、余裕を持った対応が可能になった |
AI電話の導入を成功させる3つのポイント

湘南鎌倉総合病院の事例から、AI電話の導入を成功させるためのポイントは以下の3つです。
- 明確な目的の設定
- スタッフの協力
- 継続的な改善
このポイントは、貴社がAI電話を導入する際の指針となります。
明確な目的の設定
AI電話の導入を成功させるためには、何のために導入するのか目的を明確に設定することが必要です。
湘南鎌倉総合病院では断らない医療という理念を実現するため、AI電話の導入を決めました。
AI電話の導入目的を、業務効率化だけでなく、サービス向上やクレーム削減、スタッフの負担軽減といった目標として設定することで、プロジェクトの方向性が明確になり、全体の意識統一が図れます。
スタッフの協力
AI電話が人間のように自然な会話をするためには、現場の知識と経験が欠かせません。
特に、医療現場のように専門用語が多く、問い合わせ内容が複雑な現場では、スタッフの協力がAI電話の精度を左右します。
湘南鎌倉総合病院の事例では、約20名のスタッフがプロジェクトに参加し、各診療科の応対ルールや医療用語、さらには高齢の患者特有の発話まで分析・調整を行いました。
40以上ある診療科ごとの複雑なルールをAI電話に学習させ、現場の実情に即した対話シナリオを構築したことが、導入成功の要因です。
継続的な改善
AI電話は実際の通話データを学習し、分析することで、より自然な応対が可能です。
湘南鎌倉総合病院が導入したDr.JOYのAI電話では、導入後も入電データを定期的に分析し、対話シナリオの最適化を行うサポートを提供しています。
予期せぬ質問への対応方法を追加したり、音声認識の精度を向上させたりといった改善を繰り返します。
AI電話の導入は、単なるツールの導入ではありません。明確な目的を掲げ、現場と協力し、改善を続けるプロセスが組織を変革します。
まずは、上記の3つのポイントを参考に、貴社ならではの導入目的を考えてみてはいかがでしょうか。


コメント