日々の業務で生産性向上やDX推進に課題を感じていませんか?多くの企業が人手不足やコスト増に悩む中、効率化は喫緊の課題です。積水ハウスは「Neural Network Console(NNC)」を活用し、製造ラインの生産性を31%も向上させることに成功しました。
本記事では、その舞台裏を徹底解説し、具体的なプロセスと成果をご紹介します。
積水ハウスがAI導入に至った背景と課題

生産性向上、省エネ、働き方改革という三つの課題を同時に解決する必要があり、製造ラインの自動制御と製造管理の高度化が急務でした。
製造現場のシステム改善と企画
収益性向上、環境配慮、労働時間改善を柱とし、スマートシステム構築を企画し、山口工場の梁製造ラインを対象に、IoTを活用したデータ常時収集とAI制御を前提に設計しました。
- 収益性向上:ライン全体の最適制御でボトルネックを解消。
- CO₂削減:エコ運転の自動切替で省エネを常時実行。
- 働き方改革:勤務表と生産指示をAI製造管理で自動調整。
これにより、積水ハウスは生産性の向上と環境価値の両立を実現し、現場の意識改革にもつながりました。
生産性31%向上を実現したAI技術とアプローチ

AIライン制御、AIエコ運転、AI製造管理の三位一体でスマートシステムが機能し、NNCを中核として現場に浸透させていきました。
NNCは、ソニー提供のディープラーニング開発ツールで、プログラミング不要のGUI操作や既存システムとの連携のしやすさが特長で、保守性や操作性の高さにより、AI初心者でも学習モデルの改善が可能な点を評価し採用しました。
AIライン制御:製造ライン全体のデータを活用
1,000点を超える機器を社内ネットワークで接続し、1棟あたり5万件超のデータを自動蓄積。NNCが学習した結果をもとに、合流工程の到達時間を予測して分岐制御を最適化しました。
- 機器の全面ネットワーク化:稼働・生産・電力消費をリアルタイム収集。
- ビッグデータ学習:設計・加工・工程状態の相関をNNCが把握。
- リアルタイム最適化:滞留回避と手待ち削減により生産性31%向上を達成。
AI制御導入後は、現場判断の属人性が減少し、ライン全体の安定稼働率も高まりました。

(https://dl.sony.com/case/sekisuihouse/)
AIエコ運転:省エネとコスト削減を実現
過去のライン状況を学習し、生産性に影響を与えない範囲で省電力状態へ自動切替。現場モニターで稼働を可視化し、作業を他工程へシフトしました。
- 判断モデル:エコ停止可能時間を秒単位で推定。
- 効果:電力12%削減を実現し、環境負荷の低減にも貢献。
- 運用:モニターでエコ状態を可視化することで段取り替えを前倒し、リソースを有効活用。
この省エネ化は、同社のカーボンニュートラル方針にも整合し、全社的なエネルギー最適化の礎となりました。

(https://dl.sony.com/case/sekisuihouse/)
AI製造管理:勤務表と生産指示の自動調整
受注・在庫・スキル情報を入力し、週間勤務表と日次生産指示を自動作成。変動に応じて日次調整を行い、残業抑制と生産平準化を両立しました。
- AI計画に基づく自動調整:人員配置と作業順を統合的に最適化。
- 効果:手待ちや過剰割当が減り、労働時間9%削減を達成。
AIが生産データを学習し、勤務表や生産指示を自動調整したことで、現場全体の計画精度と業務効率が向上しました。
AI導入プロジェクトの具体的プロセスとステップ
短期間で成果を出すため、設計をシンプル化し再現性を高めました。
ディープラーニングの検討とNNCの選定
Pythonは環境構築や連携に手間がかかるのが課題だったため、GUI操作で学習・評価が容易で、コマンド連携も可能なNNCを採用。ソニー製でドキュメントが充実し、開発経験の浅いチームでも扱いやすいことが決め手で、教育コストを抑え、AI運用を内製化できた点も成果です。
データ収集体制の構築
ライン機器をネットワーク化し、加工・稼働・環境データを統合管理。1秒単位で可視化し、異常の早期検知と予防保全を実現しました。
AIモデルの構築と継続的改善
NNCでモデルを構築し、固定した指標で継続改善を実施。現場の声を反映し、精度と使いやすさを両立しました。
AI導入による効果と成果:数値データで見る変化

KPIは生産性・電力・労務の三軸。山口工場の実測値をもとに投資対効果を可視化しました。
| 指標 | 改善率 | 主な要因・効果 |
| 生産性 | +31% | 合流工程の予測制御や段取りの平準化により滞留を削減。品質が安定し、出荷予測の精度も向上。AI導入で判断時間が短縮され、生産変動が平準化。 |
| 電力消費量 | −12% | エコ停止範囲の拡大と自動制御により省電力化。社員の省エネ意識が定着し、年間CO₂排出量19,000kg削減。CSR指標にも貢献。 |
| 労働時間 | −9% | 勤務表の自動作成と即日リスケ機能により残業を抑制。属人的な調整を削減し、働き方改革を推進。 |
これらの成果により、工場全体の安定稼働と環境・労務両面での持続的改善が実現しました。
導入時・運用時に直面した課題と対策

Pythonによる開発時の技術的課題と、それを解決するためのNNC(Neural Network Console)への移行、さらに導入後のAIモデルの精度維持という二つのテーマに焦点を当て、改善プロセスを解説します。
Python開発の課題とNNCへの移行
・ライブラリ管理:Pythonではライブラリやバージョン管理が煩雑で、環境構築に手間がかかるため、NNC導入により、GUI操作と統一構成で管理負担を軽減し、安定した環境を整備しました。
・システム連携:既存システムとの接続や保守の難しさを、コマンドライン(CLI)による連携で解消。トラブル時の調査も容易になり、安定稼働を実現しました。
・導入効果:学習から評価までのリードタイムを短縮し、現場検証サイクルを高速化。改善結果を迅速に反映できる体制を整えました。
AIモデルの精度維持
AIモデルの精度を保つため、定期的なデータ再学習とモデル改善を実施。新たな生産データを取り込み、最新状況に適応させることで精度を維持しています。現場のフィードバックを基にパラメータを微調整し、日々変化する生産現場でも安定した制御と効率化を実現しました。
今後の展望と応用可能性

他ラインへの展開や工場リソース最適化を進め、スマートシステムをさらに拡張することを検討しています。
他ライン展開によるスマートシステム拡張
AIライン制御・AIエコ運転・AI製造管理の三要素で構成されたスマートシステムを基盤に、各製造ラインの特性に合わせたカスタマイズを行いながら、他の製造ラインへの展開と効率的なAI導入を計画しています。
AIによる工場リソース有効活用システムの企画
人・リフト・材料置場などのリソース配置を最適化し、待機や移動の無駄を削減。作業員のスキルや在庫状況を考慮し、効率的な人員配置やリフト運用を実現する企画も進めています。
まとめ

本事例は、自社開発とNNCおよびIoT活用により「生産性31%」「電力12%」「労務9%」を同時に達成しました。ディープラーニングを運用現場に組み込み、製造管理と自動制御を一気通貫で最適化した点が特筆されます。
製造業におけるAI活用の可能性を大きく広げるもので、AI開発の経験がない企業でも導入しやすいことを示しています。



コメント