大阪市は、積極的にDX戦略を進めています。しかし市だけでは困難です。
そこでPwCコンサルティング合同会社の支援を受けながら、AWSの活用などを行っています。
具体的にどのような課題を抱え、PwCにサポートしてもらいながらどのような対策を行っているのでしょう。
本記事では大阪市が推進するDX戦略について、PwCの戦略支援やAWSの活用なども含めて解説します。
大阪市DX戦略と行政課題
大阪市は「Re-Designおおさか~大阪市DX戦略~」に基づいて、行政サービス・業務プロセスのDXに取り組んでいます。その理由としてあげられるのが、社会環境の変化と持続可能な都市発展です。
近年、部門ごとのデータ・システム分断が課題となっており、スムーズな行政サービスの提供が困難になっています。これらを解決するためにはDX人材が不可欠です。
しかし、限られた予算内では限界があり、新技術の導入と安定した運用を予算内で納めるためには、庁全体の改革と戦略的な投資が必要です。
AWSの生成AI基盤とPwCの支援
大阪市は行政が抱える課題を回避しながらDX戦略をスムーズに進めるため、AWSの生成AI基盤とPwCコンサルティング合同会社に支援を求めました。
生成AI活用に最適なクラウドの選定と構成
大阪市は安全性・拡張性・コスト効率を兼ね備えたうえで、市民サービスの質を継続的に向上できる基盤を、理想のクラウドと定義付けしました。
これを踏まえたうえでPwCコンサルティング合同会社は、AWSの生成AIを基盤を活用した最適なクラウド構成と運用設計を実現させます。
PwCの戦略支援
大阪市DX戦略を進めるにあたり、AWSの生成AI基盤の導入は市だけでは困難です
。そこで、PwCコンサルティング合同会社が戦略支援を行っています。
PwCの具体的な支援は、主に以下の通りです。
- AIで目指すビジョンの設計
- リスク管理のためのルール策定
- 業務での試行
- 詳細な手順作成
これらを一貫して支援することにより、市民サービスの質向上や労働力不足の解消に向けた変革を行っています。
検証のステップと職員巻き込み
PwCコンサルティング合同会社は、検証ステップの設計と職員巻き込みについても支援を行いました。
PoC設計と優先シナリオ選定
検証の最初のステップは、業務課題が起点となるPoC(Proof of Concept)設計と優先シナリオの選定です。技術導入ありきでは、現場が抱える問題解決にはなりません。職員が抱える具体的な課題から検証テーマを設定することが重要です。
問題解決に直結させるための戦略的なプロセスとして、以下のような方法があげられます。
- 職員のヒアリングによる業務課題の洗い出し
- 課題に対するAIなどのデジタル技術効果の評価
- 費用対効果や実現の可能性が高い課題を優先シナリオとして選定
なお、大阪市はPwCコンサルティング合同会社の支援のもと、約2カ月かけて実現させました。
試行環境の早期検証とフィードバック
試行環境における早期検証とフィードバックは、デジタルソリューションの実効性を確保するための鍵です。大阪市のDX戦略をスムーズに進めるため、不可欠な要素ともいえるでしょう。
具体的な手順として、以下のような例があげられます。
- 本番導入前に専用環境でのプロトタイプを稼働
- 実際のユーザーや業務担当者による検証
- 検証で得られたデータや改善要望を収集
- 開発チームにフィードバック
- 修正・改善
上記はあくまで一例であり、必ずしもこの手順に沿って行わなければならないわけではありません。
例で示したようなサイクルを継続的に回すことで、品質と実用性の高いシステムを開発・提供できます。
職員参加型ワークショップ
職員参加型ワークショップは、DX推進などにおける理解促進や意識改革に効果的な手法です。職員自身が主体的に議論やグループワークを行うことで、テーマへの理解を深めると同時に当事者意識を高めます。多様な視点に触れることで、知識が「知っている」から「理解して実行できる」段階へと定着します。さらに、ブレインストーミングやロールプレイングを通じて部門や階層を超えたコミュニケーションが活性化し、最終的には組織全体で課題解決に向けた共通認識が形成されます。
業務効率化と品質向上
具体的な業務の効率化と品質向上について、問い合わせ・定型文作成・政策立案支援の3つにフォーカスして確認していきましょう。
問合せ対応効率化
問合せ対応の効率化は、チャットボットやFAQ自動化といったデジタル技術を活用する方法が推奨されます。デジタル技術を導入することで、行政サービスの業務効率化と品質向上の両方の実現が可能です。
| 方法 | 概要 |
| チャットボット | ・定型的な質問に24時間365日即時対応 ・職員が対応に割く時間が大幅に削減 ・対面での丁寧な対応が求められるサービスの品質向上 ・真に人が介在すべき業務への職員シフト |
| FAQ自動化 | ・利用者自身での自己解決を促進 ・問い合わせそのものを減らす効果あり ・職員の負担軽減 ・行政コストの削減 |
AIは常に一貫性のある正確な情報を提示します。回答の属人化を防止し、対応品質が安定・向上するでしょう。
このようにAIを導入することで職員の負担軽減と行政コストの削減に貢献するとともに、サービス提供品質を高めるというメリットをもたらします。
定型文作成の高速化
定型文作成の高速化は、行政業務の生産性向上に欠かせない取り組みです。
議事録や報告書など形式が決まった文書は、これまで過去事例のコピーや修正に多くの時間を要していました。
生成AIを活用すれば、簡単な指示やキーワード入力だけでAIが過去データを基に文案を瞬時に作成します。
職員はAIが生成したたたき台をもとに内容確認や微調整に専念でき、作業効率が飛躍的に向上します。
これにより、文章作成にかかる時間と労力を大幅に削減することが可能となりました。
政策立案支援強化
政策立案支援の強化は、行政の意思決定の質を高めるうえで重要な課題です。
従来の政策立案は、過去の事例や職員の経験に依存しがちでした。しかし現代の複雑な社会課題に対応するためには、証拠にもとづいた政策立案が欠かせません。これを可能にするのが、デジタル技術です。
- 行政が保有する大量かつ多様なデータを統合
- 高度にデータ分析
- 地域の現状や課題発生のメカニズムを客観的かつ正確に把握
- 分析結果をもとに機械学習といったAIモデルを構築
- 規制緩和などの特定の政策オプションを導入した場合の影響をシミュレーション
政策決定者は、勘や経験に頼る必要がありません。
AIが提示した科学的なエビデンスや予測結果に基づいて、効率かつニーズに合致した政策の選択が可能です。
政策の実効性と透明性が向上し、限られた行政資源を最大限に活かした行政運用が実現できました。
セキュリティ・精度・責任分界の問題
PwCコンサルティング合同会社にサポートされながら大阪市はDX戦略を進めていますが、これらで得られることはメリットだけではありません。
セキュリティ・責任分界といった面での問題があります。これらは無視できない課題といえます。
生成AIの誤生成リスクと入力制御の設計
生成AIは、必ずしも正確な情報を提供してくれるとは限りません。解答を作成する際に参考にする情報には、誤ったものや虚偽の内容も含まれるからです。
生成AIのハルシネーションリスクは特に機密性の高い業務において問題といえるでしょう。AIの出力はあくまで原案とし、最終的なファクトチェックを利用する職員側に帰属させる責任分界の設計が重要です。二重チェック体制や利用制限を設けることで、リスクを制御しつつ利活用を促進する必要があります。
アクセス制御・ログ監査・プライバシー管理設計
生成AIを安全に利用するためには、アクセス制御・ログ監査・プライバシー管理設計といったセキュリティ基盤が欠かせません。
| セキュリティ基盤 | 概要 |
| アクセス制御 | ・AI機能や機密データに対して行なう ・職務や権限に応じた利用者限定の厳格化 ・不正利用の防止 |
| ログ監査 | ・「誰が」「いつ」「内容」の履歴を詳細に記録 ・不適切な利用や情報漏洩の兆候を継続的にチェック |
| プライバシー管理設計 | ・個人情報や機密情報に対して行う ・匿名化や利用目的の明確化・情報漏洩やプライバシー侵害のリスクを軽減 |
これらを一体的に運用することで、安全性が担保されます。
ガバナンス確立と全国波及
組織が健全かつ継続的に目的を達成するためのガバナンスの確立と、全国波及に向けた取り組みについて確認していきましょう。
運用ルール、監査制度、継承設計の標準化
ガバナンス確立を実現するためには、AI利用に関する運用ルール・監査制度・継承設計の標準化が必須です。
| 概要 | |
| 運用ルール | ・AIの適切な利用方法・責任分界 ・リスク管理の明確化・職員の行動規範を設定 |
| 監査制度 | ・ルールの順守状況、AIの公正性、有効性を定期的に検証 ・継続的に改善 |
| 継承設計 | ・標準化されたドキュメント ・教育プログラム |
上記を徹底することで自治体間での共通理解が深まり、安全なAI活用の基盤がスムーズに展開されます。
他自治体展開モデル化と共通プラットフォーム構想
他自治体展開モデル化と共通プラットフォーム構想は、自治体DXを加速させるための鍵です。
具体的なモデル化として、以下のようなものがあげられます。
- 自治体で成功したAIの活用
- 業務改革の運用ルールの標準化
- システム構想やノウハウのパッケージ化
これにより後続自治体は迅速かつ確実性の高いDX導入が可能です。
モデルを支えるためには、共通プラットフォーム構想が欠かせません。AI機能やデータ連携基盤を共通インフラとして提供することで、各自治体のコスト削減を実現します。
自治体AI活用の教訓
自治体AI活用の成功には、導入初期からの現場巻き込みと文化醸成が不可欠です。職員がAIを自分のこととしてとらえ、日常業務で積極的に活用することで抵抗意識を減らし、実効性も高まります。
同時に技術の進展や組織変化に対応するため、段階的展開と拡張性を見据えた設計が重要です。始めから完璧を目指すのではなく、小さな成功を積み重ねながらエコシステム構築による持続力強化を図ったほうがよいでしょう。
組織の内外で知見・リソースを連携させるとともに、単発では終わらない自立的なAI活用のサイクルが生まれます。



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