資生堂 AI活用事例|注目のAIツール導入で変わる5つの革新ポイント

美容業界を代表するグローバルブランドでもある資生堂は、いち早くAIを取り入れて、商品開発からマーケティング、さらには顧客体験の向上まで、幅広い領域で成果を上げています。本記事では資生堂が具体的にどのようなAI活用事例があるかを解説します。特に注目するべきポイントを5つに分けて整理し、AI導入によって得られた成果や今後の可能性を分かりやすく紹介いたします。

目次

資生堂がAI導入に踏み切った背景

消費者の好みが細分化し、データ量が増える一方で、従来の経験や感覚だけでは市場に対応した意思決定が難しくなりました。このような状況下で、資生堂はAIを取り入れることにより、顧客理解を深めて意思決定の精度とスピードを高めることを目指しました。AIの導入は単なる技術の導入だけではなく、製品の価値や顧客体験を再設計するための戦略的な一つとなっています。

美容業界におけるAI活用の重要性

美容業界でAIが得意とする分野として、下記などで、AIが得意とする領域が多く存在し、業務の効率化、顧客体験の重要性、そして新たな商品・サービス開発の機会創出があります。

・色調や肌質といった視覚的な情報の解析

・トレンド予測、

・パーソナライズ提案

資生堂は、100年を超えて研究員が受け継ぐ知見・技術などの「研究開発力」と先進の「AI技術」を融合させて、人々の経験値だけでは導き出せない、AIとの共創から生まれる革新的な化粧品開発の実現を目指しています。

まさに、研究員が伝承・進化させてきた50万以上の全専門領域の研究知見を網羅した膨大なデータベースを独自のアルゴリズムを用いたAI技術で解析しています。

資生堂が導入した注目のAIツール

商品開発に活かされるAI技術

引用:https://iotnews.jp/ai/255739/

商品開発では、過去の研究データや顧客の声を解析し、最適な成分の組み合わせを効率的に導き出すことで、試行錯誤を減らしつつ顧客ニーズに合った商品を迅速に市場へ届けられるようになりました。処方開発AI「VOYAGER」を導入した結果、類似処方検索などを活用した多くの活用事例が生まれています。特に、クレンジング製剤技術とスキンケア処方技術を組み合わせることで、濃密な泡立ちとさっぱりとした使い心地を両立する処方開発に成功しました。これにより、従来課題とされていた使用感の両立が実現し、AI導入による新たな価値創出が確認されました。このような取り組みから、多様な顧客ニーズに応える迅速な製品開発が可能になることが明らかになっています。

マーケティング分野でのAI活用

マーケティングでは顧客一人ひとりにパーソナライズされた美容体験を提供するため、顧客理解の精度を高めて、ブランドを横断した顧客データの基盤を構築しています。資生堂で活用している一部のユースケースには「AWS Redshift」、「Google Cloud Big Query」「Treasure Data CDP」があります。

ツール名主な機能・活用内容効果・特徴
AWS Redshiftブランド別売上や顧客ID・セグメント単位での分析を実施し、定量・定性データを統合分析。データを横断的に可視化し、販売戦略や顧客理解を強化。
Google Cloud BigQuery顧客の行動・属性をAIで分析し、「敏感肌だけど美白をかなえたい」などの価値観タグを付与。精緻な顧客セグメンテーションとパーソナライズ施策を実現。
Treasure Data CDPデータ集計・スケジューリング処理・ツール連携を容易に実施。マーケティングオートメーションの効率化を支援。
eコマース/マーケティングAI購買履歴やSNS投稿を機械学習で分析し、ターゲティングやクリエイティブ最適化を実行。LTV予測精度向上、CPA24.8%削減、広告効果2.2倍の成果。
美容法支援アプリ(Beauty AR Navigation)AIが最適な美容法を提案し、対面指導が難しい環境でも正しい手順を案内。顧客のセルフケア習慣化と満足度向上を実現。
皮膚構造解析(デジタル3Dスキン™)AIによる皮膚構造の自動分類・解析を実施。膨大な皮膚内部データを自動処理し、解析時間を大幅削減。

顧客体験を向上させるAIソリューション

資生堂はAIを活用し、オンラインとオフラインを連携させたパーソナライズ型の顧客サービスを展開しています。ユーザーの肌画像解析や好みの把握に基づいて最適な商品や使用方法を提案し、顧客満足度とリピート率の向上を実現しています。また、「Contentsquare」AIツールを活用して顧客データを解析し、サービス上の課題や新たなニーズを抽出することで、接客方法や製品ラインナップの改善につなげています。さらに、「AIチャットボット」を導入することで、複雑な問い合わせにも即時対応し、検索や問い合わせ業務を効率化しています。これらのAI活用により、資生堂は顧客対応の質を高め、全体的な顧客体験の向上を実現しています。

資生堂のAI活用で得られた成果

データ処理基盤/分析インフラに関しては、処理時間を90%に削減し、コストを80%削減に成功しております。eコマース/広告最適化では、「カートに入れる率」が12.6%増加し平均注文額の11.4%も増加しており、売上全体で12.6%も増加しています。

グローバル販売・顧客分析システム(B-NASS+)においては、オフピーク時のバッチ処理速度を90%加速させ、運用コストを約20%削減できています。

受注処理時間(バックオフィス)は、グローバルSAP導入により業務変革支援により最適化が図られ、受注処理時間を69%削減できています。

売り上げやブランド価値への影響

AIを活用した精度の高い商品開発とターゲティングにより、顧客が気に入る製品の投入がしやすくなり、結果として、売り上げやブランド価値の向上が期待され、データに基づく意思決定は市場の適応力を自然と高めます。

業務効率化とコスト削減

処方のシミュレーションやマーケティング施策の自動化により、人的リソースの節約や作業時間の短縮が実現し、これにより開発・運用コストの削減とクリエイティブ領域へと注力が可能になりました。

他社と差別化する資生堂のAI戦略

独自のAI研究開発への取り組み

資生堂独自の化粧品開発デジタルプラットフォーム「VOYAGER」

資生堂は外部ツールの導入にとどまらず、独自の研究開発や社内の専門チームを活用してAI技術を取り込んでいます。

資生堂独自の化粧品開発デジタルプラットフォーム「VOYAGER」に搭載された処方開発AI機能は、イングリディエント・インフォマティクスを駆使し、開発されました。

イングリディエント・インフォマティクス(Ingredient Informatics)という、この処方開発AI機能の特長は、皮膚科学、感性科学、製剤科学などの基礎研究から得られた原料情報や処方データ、さらには容器設計に関するデータなど製品開発データを包括的に網羅していることです。

海外市場におけるAI活用の展開

資生堂はグローバルブランドを通じ、AIを活用した顧客体験とブランド価値向上を推進しています。
中国では「Drunk Elephant」がAIチャットボット“DRUNKGPT”を導入し、24時間スキンケア相談を実現。
香港では脳波データとAIを組み合わせた“感性×AI”プロモーションを展開し、Revieve社との提携で肌解析や仮想メイク体験も提供。
高級スキンケアやメイクアップなど4領域に注力し、バイオ技術やスキンケア融合などで革新を進めています。
各国の文化や顧客特性に合わせてAIを活用し、地域最適化された商品・マーケティングを実現しています。

今後の展望|資生堂が描くAI活用の未来

人々の経験値だけでは導き出せない、AIとの共創から生まれる革新的な価値を創出し、開発のスピードを上げて、より迅速に市場に展開することが可能になりました。さらに研究員が新しいイノベーションを生み出す創造的研究により、注力できる環境づくりも目指していくようです。

一方で、AIは大量のデータを処理する能力に優れていますが、最終的に顧客の「心を動かす」という価値を生むのは人間の感性です。資生堂はAIと人間が共に協力しあうことで、これまでにない美容体験を生み出そうとしています。

まとめ|資生堂のAI活用事例から学べるポイント

資生堂は、AIを活用して「商品開発の高速化・高精度化」「顧客体験のパーソナライズ」「業務効率化・コスト削減」「グローバル展開への適応」を実現しています。
その成功の背景には、高品質なデータ整備と現場知見の融合、そして小規模導入から段階的に拡大する戦略がありました。
AIを人の判断と組み合わせ、顧客視点を重視した運用を行うことで、単なる効率化ではなく「体験価値の向上」に結びつけています。

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